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VERTEX FINAL  作者: 銀乃矢
23/27

第23話「一騎打ち」

レース終盤、9位にいた永野も意地の追い上げを見せ、2位まで上がってきた。


しかし、松下とのタイム差はまだあるため、全力で攻めていく。



「ストームさん!永野との差は?」

『現在、4.3秒差、4.3秒差だ。ただ、差は着実に詰まってる。ファイナルラップには1秒以内になる計算だ。』

「でも、あいつまた異次元のペースで上がってきてるでしょ?」

『あぁ、でも、でも何か変なんだ。』

「どういうこと?」

『速い周回と遅い周回が交互になっているような感じなんだ。』

「つまり、ラップタイムが速くなっては遅くなるってこと?」

「そういうこと。警戒しておいてくれ。』

会話を終える。


「…速い周回と遅い周回が混ざってる…もしかするとな…」

大輝の予測は当たっていた。





「ヒロくん、もう僕は去年の僕じゃない。しっかり学んだよ。」


「その一番の武器がこれだ。」

ファイナルラップに速い周回ができるように逆算して交互に速い、遅いを繰り返すということ。


そうすればタイヤの消費量を抑えられる。




永野と、松下の差はみるみる詰まっていく。


『残り3周、残り3周。今永野とは2.1秒差。次の周でおそらく2秒は切ってくる。』

「了解。」





『残り2周。次でファイナルラップ。現在の差は1.3秒。』


ミラーを確認すると、赤いマシンがぐんぐん近づいていた。

「…どんどん、赤いのが大きくなってる。」


ヤス・マリーナ・サーキットの長いストレートに差し掛かる。


永野がDRSとモーターブーストで加速してくる。



『抑えろ!』

あの日、リタイアにつながった時と同じセリフが聞こえてくる。


接触することなく、永野を抑え込む。


『次のストレートも永野はDRSが使える。こっちもモーターブーストで対抗しろ。』

「了解」


ステアリング裏にある、モーターブーストスイッチを押す。


微弱ながら馬力が上がり、加速する。

その微弱な差も必要だ。



2台の差は詰まり続ける。

広がらない。


「…喰われる…赤い化物に喰われそうだ。」

松下から見る永野のフェラーリのマシンは怪物と化していた。





レースはファイナルラップに突入していく。



「よしよし…差が詰まってきた。このまま。」

『よぉし、永野、順調だ!松下との差ももうないも同然だ!』


永野は淡々と加速と減速を繰り返していく。



松下との差が限界まで詰まる。

「…もらったぁ!」

松下のイン側に飛び込む。


この瞬間に首位に上がる。


「でも、でもわからない。ヒロくんは思いもしない戦い方をしてくる。」



第8コーナーを抜け、第9コーナーを目指して加速していく。


ミラーを見ると松下はアウト側に陣取っていた。

「これなら、俺らの勝利だ。」



第9コーナーへ。

この瞬間、松下がニヤける。

「油断したな…永野。それはほんの少し、オーバースピードだ。」


目の前を走っていたフェラーリのマシンが大回りなライン取りになる。

「もらったぁ…!」


この一瞬にして、首位がまた変わった。


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