第19話「圧」
最終戦の舞台、アブダビのヤス・マリーナ・サーキットに到着する。
F1の最終戦といえばここ!というイメージが完全に自分の中では染み付いている。
そして、ここでの明日のレース次第でStorm F1がチャンピオンを獲得できるか決まる。
「うえっぷ…ぎぼぢわるい…」
松下の顔は青ざめきっていた。
「おいおいおいおい、大丈夫か?真っ青だぞ?水飲むか?それとも袋か?」
「ふ…ふぐろをだどぶ…」
袋を受け取ると、すぐそこの物陰に逃げ込む。
そこにはお見せできない光景が広がっていた。
「あぁ…すっぎりじだぁ…」
「なんかまだダメそうだが?どうした?」
「なんか、ワールドチャンピオン意識しだしたら緊張が止まらなくて。」
「お前、意外とプレッシャーに弱いんだな。」
「いや…今日ホテルでパスタ大盛りで2回おかわりしたのが悪かったかも…」
「プレッシャーかかる日に何そんな食ってんだ。」
「まぁいい。このあとの予選は大丈夫そうか?」
「それはもちろん!今、ゲ◯も吐いてすっきりしたし!」
「じゃあ、問題ないな。」
予選が始まる。
『いいぞ!松下!今2位だ!1位はアンドリュー、タイム差は0.3秒だ!詰められない差ではないぞ!』
「分かった」
しかし、予選、こんなに走りにくかっただろうか。
なんだか、何かに圧迫され続けている。
しっかりとステアリングを切れない。
アクセルも踏み込めない。
全体的に何か…何か…
『松下、アンドリューが、お前緊張してるだろ?引きずることは一番だめじゃなかったのか?パスタ野郎、だとよ。』
「…!そうだ。ワールドチャンピオンを獲得する、これがずっと自分の頭の中に残り続けていたんだ。よぉし、スッキリしたぁ!行くぜ!あでも、パスタ野郎は余計だな」
プレッシャーから解放された彼は誰にも手が付けられない状態になっていた。
気づけばアンドリューを逆転、それどころかコースレコードまで更新していた。
『よし!お疲れ様、P1、P1だ。明日のレース1位からスタートできるぞ。』
「よし!よし!良いぞ!」
ピットに戻ってくるとみんなが出迎えてくれる。
そして、アンドリューに声をかける。
「アンドリュー、さっきはありがとうな。あの言葉で緊張ほぐれたわ。でも、いくらパスタ食ってたからってパスタ野郎はなくねぇか?」
「アッハハハ、あれ、結構気に入ってるんだぜ。最高だろ?まぁ、おめでとう。」
「ありがとよ。」
予選結果
20号車 松下 1位
54号車 アンドリュー 3位
明日のレース。これですべてが決まる。




