第15話「再会」
ドライバー共用のロッカールームに向かう。
すると、ベンチに座り込む人がいた。
「駿、ここにいたんだな。」
「…あぁ…予選も終わったからな…」
彼の声は弱々しかった。
「ちょっと、こっち向いてくれるか。」
「…?」不思議そうに顔を上げる。
ペチン。
乾いた音が聞こえる、
「どうだ?目ぇ、覚めたか?」
「……でも、やっぱり…」
「でももへったくれもねぇよ。レーサーには引きずることが一番いらねぇんだ。とある人の言葉だがな。」
「…明日のレースは辞退するよ。このまま走っても、多分まともに走れない。」
「そうか。じゃあ、本当に明日こそはお前の分まで勝ってきてやる。」
「…あぁ。」
ロッカールームを後にする。
「…駿、明日のレース辞めるのか。」
その後、その日の夜のうちに駿が明日のレースを辞退することをチームが発表した。
翌日、スタート準備を進めていた。
「松下、それ何だ?」
代表が彼が手に握りしめたものについて尋ねる。
「これは、ノアの母国の国旗ですよ。フランスの。」
「今日、レース終わったら掲げようって。俺も彼に救われましたからね。」
「そうか。確かにお前と仲良かったもんな。」
「もう、昨日のメールも読むのが辛かったです。でも、受け入れないと前には進めない。代表も言ってたじゃないすか。」
「…そうだな。まあ、今日のレースも期待してるよ。ただ、アンドリューにだけは注意しろよ。今日もお前のすぐ後ろからスタートだ。」
「…了解。」
国旗を握りしめ、マシンに乗り込む。
『おし、フォーメーションラップスタート。前に続け。』
グリッドを離れ、1周、走る。
昨日のノアの事故現場を通る。
…ノア、見ていてくれ。
そう祈り、通過する。
『全車グリッドについた。スタートするぞ。』
5つすべてのレッドシグナルが灯り、消える。
イギリスでのF1グランプリが開幕した。
スタートダッシュを決め、いきなり表彰台が狙える3位になる。
しかし、自分のレースが終わるのは早かった。
第9コーナーに差し掛かる。
「またアンドリューが近い。でも、今回こそはぁっ!?」
突然衝撃が来る。
そして、マシンは勢いよく回転する。
減速のための行動をしたが、無駄だった。
その勢いのまま、タイヤバリアに激突した。
その時の速度はゆうに280km/hは超えていた。
激突した瞬間、自分の意識は途切れた。
次に目が覚めた時いたのはどこかのピットガレージの中。
そこには自分が乗っているカーナンバー20をつけたST-02と、ART GPのカラーリングのF2マシンが整備されていた。
「ん?あれ…ここは…俺はさっき事故って…」
「やぁ、マツシタ。久しぶりだな。」
「ノア?!どうしてここに?!」
「どうしてって、君がこっちに来ようとしているからさ。」
「?」
「マツシタはさっき、タイヤバリアに激突したんだ。それで君は今意識がないってこと。」
「じゃあ、なんで俺は今こうして喋れてる?」
「本当に理解力がないね、マツシタ。」
「君は今、死と生の間にいるんだ。もし、このまま僕についてくれば君は死ぬってこと。でも、君はどうしたい?」
「そりゃあ、もっとF1に乗りたい。」
「正直だ。じゃあ、またいつか会おう。」
そうして、ノアに突き飛ばされる。
目が覚めると、そこは病院だった。
そして、自分は泣いていたみたいだ。
隣を見ると、大号泣した駿がいた。
「よがっだぁ…よがっだぁ…」
「おいおい、どうした?駿、とりあえず鼻水かめ」
ティッシュを手渡す。
「本当にすまなかった。アンドリューの位置を伝えなかった俺が悪い。本当にすまなかった。」
ストーム代表は勢いよく頭を下げる。
「いや、俺もミラーをしっかり見ずにあのコーナーに進入したのが悪かった。」
「そういえば、アンドリューは?」
「あいつは今、FIAからお前との接触について聴取を受けている。」
その後、2週間の検査入院をし、退院した。
しかし、彼らの衝突は止まらない。




