第16話「衝突、再び」
F1を戦う1年は早い。
気づけば中盤戦のベルギーグランプリが始まろうとしていた。
「ヒロキ、ちょっと来れるか?」
自分の部屋で準備をしていると、代表に呼ばれた。
「実はな、昨日チームメンバーで話し合って決めたことがあるんだ。」
「何を決めたんですか?」
「残りの大会、すべて、お前をこのチームのファーストドライバーとして扱うことだ。」
これはつまり、松下を優先した戦略を採るということを意味する。
「俺がファーストドライバーに?」
「あぁ、お前の方が期待できるからな。」
「これはアンドリューには伝える?」
「いや、これは伝えない。あいつにこれを伝えると何が起こるかわからないからな。」
「わかった。じゃあ、俺からもアンドリューには伝えない。」
「それで頼んだ。」
そしてすぐに決勝レースが始まる。
『今回からお前を優先した戦略を使う。意識しておいてくれ。』
「了解。」
レース19周目。
『3週後、お前をピットに入れる。』
「了解」
アンドリューがDRSを使い、加速してくる。
「この差の詰まり方は守れないな。行かせよう。」
アンドリューに順位を譲る。
「!?」
アンドリューが幅寄せ、フロントウイングが松下のリアタイヤが接触する。
「パンクしたぁ!?」
『大丈夫?状況は?』
「アンドリューと当たった!タイヤがパンク!」
『OK、OK、この周ピット、この周ピット。トラブルないかこちらも確認する。』
「…またかよぉ…もうなんであの人あんなことするんだ。」
結果、この接触の影響でポイント獲得圏から脱落。
14位でレースを終えた。
『ポジション14、ポジション14。お疲れ様。今日の接触については俺からもあいつに伝えておく。』
「ホントに頼みますよ。あの人のせいで何回もレース台無しにされてる。」
ピットに戻ってくると、ニコニコしながら談笑するアンドリューの姿があった。
「…あいつ。俺のレースをぶっ壊しておいて…ッ!」
「おい!アンドリュー!なんだあの接触は!大クラッシュしててもおかしくなかったぞ!」
「あはは〜、いやいや、それでさ〜」
俺の言葉なんて聞いていないようだった。
「お前…ッ!」
俺は胸ぐらを掴む。
「あんな追い抜きして!俺を殺す気か!」
「ハンッ。知らねぇよ。お前があそこにいただけだろ。」
「ふざけるな!お前が幅寄せしてきたクセに!」
「幅寄せぇ?俺がァ?」
「あぁ!オンボード映像見れば全部分かるぞ!」
「この野郎!」
取っ組み合いになる。
すると、駿と他チームのドライバーが松下とアンドリューを羽交い締めし、制止させる。
「なんで!なんでお前は俺のレースを壊す?」
「お前みたいなルーキーが大っ嫌いだからだ!」
「なんでだよ!」
「フェラーリにいた頃、お前みたいなルーキーと組んで5年続いたチームタイトルの記録が途切れたからだ!」
「そんな理由で…?」
「だから、お前は俺の邪魔をするな!チームのファーストドライバーは俺だからだ!」
「ふざけるな!チームのファーストはお…」
「お前はルーキー!大人しく俺の後ろ走ってろ!」
「なんでだ!俺だって上の順位を目指したい!」
「それなら、他のチームに行け。ただ、俺は来年マクラーレンに移籍するがね。」
「?!」




