第12話「伝説」
あの衝突から1ヶ月後、F1はモナコ・モンテカルロへ。
一人、モナコの市街地を散策していた。
「モナコか。ここ走りにくいから嫌なんだよな。」
「そう?俺ここ走りがいあって好きだよ?」
そう話すのはさりげなく隣にいた駿。
「うわ、びっくりしたなぁ。」
「なんでいやなのさ。モナコ楽しいじゃん。」
「いやだよ〜、少しの操作ミスで壁にぶつかっちゃうんだから。」
実はF2に参戦していたころ唯一完走できなかったのがモナコなのだ。
モナコ名物のラスカスコーナーで前を走るマシンを避けようとした結果、激突、サスペンションを壊し、リタイアとなってしまった。
避けられたものだったため、悔しいものだった。
「F2であんなことしちゃうと、F1でも心配なのよね。」
「まぁね〜。」
ヌービルシケインに来る。
「お、ここからちょっとした港にも行けるんだ。」
「ホントだね。俺もああいうボートほしい〜。」
「いずれは余裕で買えるようになるでしょ。」
「ああいうので優雅に過ごしてみたいものだねぇ。」
3時間後、波風が吹くモナコにF1のエキゾーストノートが響き渡る。
さっきまで落ち着いていた市街地がF1のサーキットになる。
F1モナコグランプリの練習走行が始まる。
走り出して第一に思うのは
「狭い!なんだこの道幅!」
そう、モナコグランプリで使われるこのコースはF1が開催されるサーキットの中で一番道幅が狭い。
また、最高速度も狭い分一番低い。
『今のタイムで3番手に上がった。好調だな。』
「俺的には攻めきれてない感じがするんですけど」
『2位の永野から0.2秒落ちだ。まぁ、乗れているんじゃないか?』
「まぁ、そのくらいのタイム差なら大丈夫ですかね。」
『とりあえず、新しいセッティングも試したいからこの周でピットに戻ってきてくれ。』
「了解」
『今度はタイヤの熱の改善に力を入れたセッティングを試す。さっきのはタイヤが熱を持ちすぎて走りにくかっただろ?』
「たしかに、タイヤが思ったより早く使い物にならなくなりました。」
『今回のセッティングで改善されるはずだ。試してくれ。』
1時間のフリー走行を終え、明日の予選に備える。
駿とノアと3人でホテルに向かう。
「今日の予選、ノア速かったじゃん。」
「えへへ。そりゃあ、2人と同じ舞台で早く戦いたいからね。」
「じゃあ、来年くらいには一緒に戦っているかな?」
「そのつもりさ!」
その時、コースの方が騒がしいのが気になった。
「なんか、すごいエンジン音がするね。」
「多分音的にV8かV10らへんの多気筒エンジン…」とヒロキ。
「そんなのわかんの!?」
「もちろん。クルマと一緒に成長してきましたから。」
そうしていると、音が近づいてくる。
「お!来た!」
そうして3人の目の前を駆け抜けていったのはマクラーレンホンダのMP4/6。
かのアイルトン・セナたちが多くの勝利を掴んできたマシンだ。
「もう1台来るよ!」
もう1台はルノーのR25だ。
このクルマはフェルナンド・アロンソが当時最年少でドライバーズチャンピオンに輝いたマシンだ。
「音すげぇ!」
みんなで耳をふさぐ。
映像では何度も見てきたが、実際に聞くと音の圧がすごい。
このF1マシンたちが栄冠を手にしてきた場所を明日、優勝をかけて走るという実感が突然湧いてくる。
「…絶対勝つ。」
「「?」」隣の2人は不思議そうだった。
「なんでもないよ〜。さ、ホテル戻ろ。」




