アクセス数
「お疲れ様」
彼はフロントへ電話してジュースを注文してくれる。届いたジュースを飲む。
「僕の方で不要な部分とか編集してからアップするけど、その前に見たかったりする?」
私は特に差し障りのないことしか話してないし、お面も付けていたからカットして欲しい箇所も無いので、大丈夫ですと答える。
彼は出演料と言ってペットボトルのジュースをくれる。
「今日は、時間取ってくれてありがとう」
「アクセス数、増えれば良いですね」
私達はカラオケを後にし、駅に向かう。馬渡さんと涼くんの二人のイケメンに挟まれて、すれ違う人がみんな振り返る。私一人で歩いていても誰も振り返らないし、もし振り返られたら何か変な点があるのかもと悪い意味にとってしまうけれど、この二人と一緒にいるとそんな心配がない。
――やっぱり男は良いなあ、それもイケメンは絶対得だなあ――
そんなことを思っていると、駅の階段の前にたどり着く。
「今日はこの辺で。またよろしくね」
そう言って、馬渡さんは手を振りながら階段を上る。
――あっさりと終わっちゃった――
もっと際どい質問されたりとか、ツッコミ受けたりとかされるかなと思っていたけれど、馬渡さんは純粋に私をYouTubeに出させたいだけだったみたい。それに私はあまり愛想が良かったとも言えない感じだったから、アクセス数は増えない気がする。もともと卑弥呼や古墳にそれほど興味のある人が大勢いるとは思えない。
家に帰るとすぐに日常に戻る。
数週間後、SNSのDMに着信があった。一瞬誰だか分からなかったけれど、アイコンを見て馬渡さんだと思い出す。
“君の動画が凄いことになってます。アクセス数が100万を超えた。僕の動画では初めてだし、ぶっち切り”
意外な気がしながらその動画を検索して再生してみる。お面を付けた私はなんとも場違いみたいで恥ずかしい。でも再生数は125万を超えている。
DMには続きがあり、
“最初は100とか200だったんだけど、あるまとめサイトで取り上げられてバズった。今度大手のニュースサイトから取材の申し込みがあった”
と書いてある。
――少しでも役に立てて良かったな――
他人事に考えていたら、
“また、出演してもらえませんか?”
とDMが来る。
“今度も顔は出さなくて大丈夫です。矢野さんの日常、例えばどんな生活してるのかとか、学生なのかとか年齢とか、そんなリクエストが多かったので質疑応答させてもらいたいです。もちろん答えられないことはNGで良いですよ“
それだったら特に問題なさそうだし、私の出た動画がアクセス数が多いというのも嬉しかったので、了承の返事を書く。




