フィーバー
次の週末、また馬渡さんは大宮までやって来る。
「こんにちはー」
待ち合わせ場所の駅前広場で、ショルダーバッグ一つでやって来た馬渡さんは上機嫌で声をかけてくる。
時間を取ってもらってごめんねと謝った後、
「今日もカラオケボックスで撮影して良い?」
と聞いてくる。
私と涼くんと馬渡さんの3人で、駅前のカラオケに入る。部屋に入ると早速三脚を出してスマホを固定し、撮影の準備に取り掛かる。
涼くんは部屋の端に座り、手持ち無沙汰。
今回の撮影は私の紹介がメインで、高校生だとか趣味は何かとか、立って一回転しておおよそのスタイルを見せたりとか、でもお面は付けたままだった。
馬渡さんは撮影が終わると、
「ほんと、今日は良い出来」
と満足して、前回と同じくあっさりと帰って行った。
翌日、彼のチャンネルを観てみると、昨日撮影した動画は既にアップされていて、アクセス数は500万を超えていた。
――えっ、そんなに!――
コメントを見ると、もっと私の個人的なことを知りたいという意見が圧倒的。
“ぜひ顔を見たい”とか、”制服姿で”とか。
また馬渡さんから撮影したいと連絡があって、前回と同じように私のもう少し詳しい紹介をすることになる。でもお面は付けたままでも良いとの条件は変わらず。
制服を着てきて欲しいと言われたけれど、少し考えてやっぱりそれは止める。私の高校は一応学校指定の制服はあるのだけれど、サイズが合えば中学の制服をそのまま着てきても良いことになっている。1年の時は中学の制服を着る人が多く、制服と学校名は一致しない。
私も1年の時は節約のために中学の制服を着ていたけれど、しばらくしてあまりにも小さくなったので、つい最近新しく買い替えてしまっていた。だから制服から高校名が分かってしまう。念の為、制服姿は勘弁してもらいたくて、馬渡さんにそう言うと、
“全然良いよ。でもその需要がすごくあるから、それで引っ張ろう”
とあっさりと言ってくれた。
次の週末も馬渡さんは再び来て、撮影すると帰って行った。
そしてとうとう、大手のニュースサイトに、
“卑弥呼の直系子孫は現役女子高生”
とタイトルが出ているのを見つける。
馬渡さんが説明していた内容と彼のチャンネルへのリンク、そして私がお面姿でポーズを取っている写真と、遺伝子検査の結果から科学的に確実であることや、馬渡さんのチャンネルがバズってることなどが書かれている。
記事には関東の女子高生としか載っておらず、写真から私を確定するのはほぼ無理なので安心できる。
そして馬渡さんのチャンネルを見ると、アクセス数はすでに1000万を超えている。私はちょっとしたフィーバーに巻き込まれてしまったようだった。




