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石下神社

ここは奈良県橿原市の石下神社。うっすらとした雑木林に囲まれている。本殿横の社務棟の一室で高価そうなソファーに座っている50歳前後のスーツ姿の男がスマホの画面をパチンッと指で弾く。

「こいつは使えるで」

彼は立ち上がると、斜め横の執務机のもう1人の50後半の男にそのスマホ画面を見せる。

「卑弥呼の直系子孫らしい。DNA鑑定書付きや」

執務机の男は眼鏡をずらし、ピントを合わせるように小さなスマホ画面をのぞき込む。彼の机の上には、“神主、物部修一郎”と書かれたプレートが載っている。

「こんなチャンスは滅多にあらへん。数百年に1度レベルや」

首から顧問弁護士、厚東仁和と書かれたネームプレートをぶらぶら揺らしながら、スマホを見せた男は興奮を抑えられない様子で言う。

「君がこの石下神社の神主に就任してまだ半年やが、就任早々これは石下神社に、いや物部一族にとっても、とてつもない利益につながるで」

「・・・」

執務机に座ったままスマホを覗き込む神主は、理解が追い付いていないように無反応のまま。

「この子を石下神社になんとか関わらせることができれば、わいらは2000年来の正当性を主張できるんや。君だって堂々と大王と名乗れる。今みたいに裏でこそこそ息を潜める必要もなくなるんや」

「・・・」

「君の神社の御神体は布都御魂大神刀と布都斯魂大神刀で、表向きは神武天皇の刀剣とされとるが、ほんまのところ中国の魏から卑弥呼に贈られたものや。石下神社の使命は卑弥呼の御神体を奉ることであって、代々2000年もその使命を全うしてきたんや。そこは君もよう分かっとるやろ。そして石下神社のもう一つの役割は物部一族の氏寺であって、君は物部一族の頭領であり表向きは石下神社の神主ということになっとるけれど、本当の名称は大王や」

「・・・」

「卑弥呼の邪馬台国は第1次物部王朝であって、卑弥呼は物部家の娘や。確か伊香色謎命、いかがしこめのみこと、と言ったかいな。今の物部一族は言ってみれば第3次物部王朝の末裔やろ。卑弥呼の子孫に押坂彦人大兄大王という人物がおるが、今で言う聖徳太子や。その子の代で第1次物部王朝は滅び、覇権は分家に移行。第2次物部王朝が始まるも長屋王の代で滅亡。さらに分家が第3次物部王朝を引き継ぐも世は藤原氏の天下となり、我々は歴史の闇に埋もれてしもうた」


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