元祖の王朝
「やけに詳しいな」
やっと神主が口を開く。
「そら、君とわいの祖先の歴史やからな。大学で君と同じサークルになった時に、君の名字を聞いてピーンと来たんや。わいかて親からご先祖様は物部と聞いてたんや、端っこの方やけど物部一族の気概はあるで。さらに君が石下神社の神主の息子と聞いて、その直感は確認に変わった。幸い君とは個人的に何かと気が合うた。卒業後、君は家業の神社を手伝い、わいは弁護士になって進む道は違うたけど付き合いが続いとる。先代の神主の頃に、君に呼ばれて石下神社の顧問弁護士をわいは引き受けたんやけど、君と仕事ができて誇りに思っとるんや。そして半年ほど前、先代の神主が亡くなり、君がとうとう石下神社神主に就任した。君が卑弥呼から延々と続く日本の元祖の王朝のトップ、つまり大王に就任したんや。だから神社に対してはもちろんやけど、君の役にも立ちたいんや」
「その気持ちは十分分かっとるよ。だけどなー」
「なんや?何が気になる?」
神主はスマホの画面を指さす。
「今どきの若い子が、こんな田舎の神社になんか、興味を持たんだろ」
「いやだから、そこは魚心あれば水心というやつやろ。巫女とか観光大使とか、いくらでも興味を惹かせる方法はある。そうや、わいが経営に関わっとるタレント事務所に特待生とかいうポジションで迎え入れて、デビューを約束すればええ。今の若い子や、アイドルになれると聞いて気持ちが傾かへん子はおらへん。特に女の子ならば」
「そうは言ってもなー」
神主は腕を組み椅子にもたれ掛かり、宙を見上げる。
「まだ何が引っ掛かるんや?」
宙を見上げ、無言のまま。
「とにかく一度接触してみて損はあらへん。卑弥呼の血やぞ。物部家の元祖本元や。部外者のわいがこう言うのは差し出がましいかもしれへんが、今の物部家は2000年の間に混血が進み、誰が本家か分からなくなっとるのが実情やろ。そこに卑弥呼の血や。一気に本流や、それも2000年の時を超えて。このチャンスをものにしないでどうするんや。もちろんこのDNA鑑定がほんまの話という条件付きではあるが」
神主はいまいち気が乗らない様子。
「とりあえず、わいの方で下準備は進めるさかい」
厚東はそう言うと、ドアをバタンと閉めて神主室から出て行く。後に一人残された神主は両手の掌を上げ、やれやれという感じでため息を付く。




