卑弥呼の直系子孫
その1週間後、石下神社の神主室に文献調査室長の武藤が入ってくる。部屋にはすでに顧問弁護士の厚東がいてソファーに座っている。
文献調査室とは、神社が保管する過去の文献を調べることが本来の業務であったが、次第に業務内容が拡大し神社が対外的な交渉などで調査が必要になった事柄なども調べるようになっていた。
武藤は神主と厚東のスケジュールの空き時間を調べ、この時間を確保しておいた。
「神主さん、ご指定の動画について調査を行いましたので、ご報告に上がりました」
「あ、ご苦労」
数枚の紙のファイルを1束ずつ神主と厚東に渡すと、彼もソファーに座る。
「まず遺伝子検査についてですが、都内のベンチャー企業、ヒューマンジェネチィックスという会社が行っておりました。この会社は一般の方の遺伝子を無料で解析し、その結果つまり将来の病気の可能性ですとか、性格の遺伝つまり自分の性格が遺伝によるものなのか後天的な環境によるものなのか、などをDNAから解析して顧客に報告するというビジネスを行っています」
「無料?じゃ、どうやって収益を上げているんや?」
厚東が横から口を出す。
「遺伝子を採取する際に、第3者に遺伝子データを開示しても良いという条項がありまして、遺伝子データを研究機関や医療機関に販売するというのが本来のビジネスです。つまり、無料でDNAサンプルを集めて、有料で販売するという非常に効率的な商売を行っています」
「はぁー、そんなビジネスがあるんや」
と厚東は感心する。
「遺伝子解析技術自体は確立されたものでして、この会社の財務的な面、過去の業績等調べましたが特に問題はなく、また外部からの圧力等も無いことから遺伝子解析の結果自体は正確なものであると思われます」
皆、うんうんと聞いている。
「次に、箸墓古墳と当神社に保管されている2本の刀剣から採取したとされるDNAについてですが、まず箸墓古墳については半年ほど前に帝都大学が宮内庁から特別許可を得て調査をしていたことが確認できました。その際にDNAサンプルを取得したものを思われます。また2本の刀剣につきましては、当神社の資産管理室に問い合わせたところ、3か月ほど前にこちらも同じく帝都大学から調査依頼が来ておりまして、当神社にて調査を許可したとのことです。この時に刀剣の柄からDNAサンプルを採取することは可能であり、それらを先ほどのヒューマンジェネティックスとは別の解析会社で解析しておりました」
と室長は言って、レポートの一部を示す。
「こちらの会社の解析結果も正確なものであると想定されますから、結果として神主さんからご指摘の動画の遺伝子検査の結果の信憑性は高い、つまり該当の女性は卑弥呼の直系子孫であると言える、と思われます」
「よっしゃ」
厚東が手を打つ。
「本物の卑弥呼の子孫や。後はどうやってこっちに付かせるかや」




