撮影
翌日、カラオケ店へ行き指定された部屋番号のドアをコンコンっとノックする。ドアが開いて馬渡さんが顔を出す。やっぱり馬渡さんはイケメンだ。
「おはようございます」
と言うと、彼は涼くんを見て少し意外そうな顔をする。
「知り合いって男の子だったんだね、まあ入って」
部屋はかなり狭くて前面にモニターがあって、3方はコの字型のソファーになっている。
ソファーに勧められ、
「彼氏くんはこっちで待っててもらえる?」
とソファーの端の方を指差すので、涼くんはそこに腰掛ける。馬渡さんはモニターの前に三脚を置いて、スマホをこちら向きに固定する。
「遺伝子検査の結果の紙は持ってきてくれた?」
「はい」
昨日のチャットで持ってきてと依頼されていたので、カバンから取り出して手渡す。彼は私の名前の部分にポストイットを張り見えないようにする。
「これ、被って」
ディズニーの白雪姫かシンデレラみたいな女性キャラクターのお面を私に差し出す。
被ると
「おっ、似合う似合う」
と褒めてくれる。
――こういうノリは心地好いな。大学生だからかしら?それとも馬渡さんが女性慣れしてるのかしら?――
それから、撮影をどういう段取りで進めるか、おおよその説明を受ける。基本的に、私は馬渡さんからされる質問にその時その時に答えれば良いみたい。
「じゃあ、始めようか」
彼はスマホの録画ボタンを押すとソファーの私の隣に座る。
「リクでーす」
という言葉とともに、YouTubeチャンネルの簡単な説明を始める。
――YouTubeの中ではリクって名乗っているんだ――
彼の軽快な話術はいつもの会話そのままの感じ。立て板に水のようにさらさらと流れ一人でボケとツッコミを続けるのだが、それが無理している感じではなく、とても自然で聞いていて心地が良い。これは一つの才能と言えるかもしれない。それから、昨日コーヒーショップで私に話した古墳の話が続く。
私は隣で黙って座って聞いているだけで、予想に反して結構楽かもと思い始める。
「今日は特別なゲストに来て頂いています」
私の方を向き手をヒラヒラとさせる。突然振られて少しびっくりするけれど、お面を被っているから顔は見えない。
「君の遺伝子検査の結果、見せてもらえる?」
私はポストイット付きの結果用紙を、目の前の三脚の上のスマホのカメラに映るように出す。
「それで、こっちが箸墓古墳と石下神社奉納の剣から採取したDNAの結果」
彼はもう1枚の紙を見せ、2枚の結果を並べ示す。
「驚くことに全く一緒。これの意味する所は、、、」
私の方を見る。
「この方は、正真正銘の卑弥呼の子孫でーす。えっ、それ、すごくない?」
私はどう答えれば良いか、迷ってしまう。
「何かコメント、どうぞ」
「うーん、特に実感ないです」
「謙虚な方ですねー。俺だったら威張りまくりますよ。お面を付けてられますけど、顔は出せませんか?」
「そこまでの勇気は、、、、まだ、、、」
「今後の乞うご期待って所ですかね」
そんな感じでしばらくトークを続け、最後にチャンネル登録お願いしまーすと言って、スマホの録画停止ボタンを押して撮影を終わる。




