供述書
彼は石下神社に着くとその足で神主室に向かう。ノックをして扉を開けると神主は何枚かの書類を読んでいた。
「今、ええか?」
「ああ、ちょうどこっちも君に話したいことがあったんだ」
厚東はそれはYouTuberとのPRの話だろうと勝手に解釈し、部屋中央のソファーに座る。
「今度うちの宣伝を依頼するYouTuberの話なんやが、ニュースは聞いとるか?」
「ああ」
「なら話は早い。あれはあかん。キャンセルでええか?」
「ああ」
あっさりと神主が了承するから、彼は少し意外に思う。
「まあ、YouTuberなら他にいくらでもおる。彼らを使って宣伝するのは悪い戦略ではなかったとわいは思う。また別の歴史系のYouTuberを探そうや」
「ああ」
神主の口数が少ないのが気になって、厚東は訝しげに会話を控える。
「君の話は、以上かね?」
沈黙を破る神主。
「そうやが」
と厚東。
神主は読んでいた書類の束を持って、厚東の向かいのソファーに座りそれを厚東に渡す。
「小嶋君の供述書だ。彼が新聞記者、朝比奈さんの殺害を指示したらしい」
厚東は一生懸命に無表情を装ったが、内心小嶋の関与がバレたことに驚いた。彼はそう簡単に尻尾を出さないと思っていたからだ。
ざっと1枚目に目を通し、白々しいため息をつく。
「やっぱり彼やったかー。優秀なやつやったんやけど、野心があり過ぎて暴走する気があったんやな。気付けんかったわいも責任を感じるで」
初めて小嶋の犯行を知ったように、彼の単独犯行で自分は全く何も知らない善意の第三者のような口ぶりで、大げさに両手を広げて驚いた振りをする。
「2枚目もある」
神主に促されて彼はページをめくる。
つらつらつらと目線が書類の字を追う。突然目線が止まり、彼の全身もピタリと凍りつく。それから恐る恐る口を開く。
「ここにわいの名前が書いてあるんやが」
「うん」
しばらくの沈黙。
「意味が分からへん」
「まあ、書いてあるとおり。そういうことだ」
小嶋は厚東の関与についても供述書に書き、神主に彼の関与が知られてしまったということだった。




