巨大モニタ
厚東弁護士は神社団体の会合のために大阪府内へ出ていた。会合が終わり近鉄に乗り換えのため難波の駅前を武藤室長と歩いていると、ビルの壁面の巨大モニタにYouTuberリクのスキャンダルのニュースが映し出されている。
2人はビルの前で立ち止まる。ニュースは彼がホストクラブの女性客に暴行したと報道している。そして次に少し画質の悪いホテルの一室らしき場所の動画が流れる。登場人物は男と女の2人で、女性の顔はモザイクになっているが男の方は馬渡だと分かる。彼が女の顔を殴ったり、水を張った風呂場に女の顔を乱暴に沈めたり、倒れた女の顔や腹を蹴ったりなどまざまざと放映される。多くの通行人が歩みを止めてモニタを見つめる。
「あれっ、これ、今度うちがPRをお願いするYouTuberじゃないですか?」
武藤が口を開く。厚東も興味半分に顔を上げ、やがて苦々しい顔で腕を組み真正面からじっとモニタを見上げ、そしてつぶやく。
「ネットで成り上がった者は、ネットに足をすくわれる」
しばらく2人は巨大モニタの馬渡のニュースを見ていたが、次の話題になったところで駅に向かい出す。
「PRの件、キャンセルですかね?」
「そら、もちろんそうやろ」
厚東はもともと馬渡のことをあまり良く思っていなかった。卑弥呼の血筋は何としても手に入れたかったけど、それに余分なものが付いてきた感じに思っていた。だからこれを理由に男の方だけ切って、矢野という卑弥呼の子孫だけ手に入れる良いチャンスかもしれないと頭の片隅で計画を思いつく。彼女は物部家の養子になることを断ってきたと聞いたけれど、男がいなくなれば天涯孤独の一人ぼっちで心細いはずだ。説得しやすくなる。そんな考えが浮かぶ。
「石下に帰ったら、早速神主に相談やな」
これで全て上手くいく。はやる気持ちを抑えて彼は近鉄難波駅に向かう。




