悪い結果
奈良の石下神社の神主室。
文献調査室長の武藤と神主の物部修一郎が向かい合ってソファーに座り、武藤はレポートを神主に手渡す。
「悪い結果です」
神主ははぁーとため息を付きながらレポートを受け取る。
「神主様のご指示で、小嶋資産管理室長の周りの資金の流れをヤタガラスを使って調べました。その結果、彼がタックスヘブンのバハマに所有する個人資産管理会社からシンガポールの警備会社、ロイヤルオリエントセキュリティーインクへ1万3千シンガポールドル、約150万円送金していたことが確認されました。資産管理会社の名義は他人のものですが、通信記録から彼が指示したものと思われます。ロイヤルオリエントセキュリティーインクは表向きは警備会社となっているものの、実態は尾行、盗撮から要人暗殺、強盗など何でもありのかなりガラの悪い会社で、朝比奈記者の殺害犯もここに雇われていました。ちなみにこの殺害の実行犯はタイ国内で死亡済みで、すでに口封じが行われたものと思われます」
神主はうんざりした顔をする。
「この証拠は確実なんだな?」
「はい、もちろんです。その証拠書類もこちらに用意しています」
彼は書類の束に目を通すと、バサッとソファーテーブルの上に投げ捨てる。
「分かった。ありがとう。あとは私がする」
武藤は渋い顔をしながらソファーから立ち上がると、部屋をあとにする。
神主は電話を取り上げると、秘書室にかける。
「小嶋くんは来ておるかね?あー、そうか。分かった。それから警備員を二人ほどわしの部屋へ回してくれ」
彼は小嶋が登社していることを確認すると、ソファーの上の資料を再度読み始める。
しばらくすると、神主室のドアをコンコンとノックする音がして、ガタイの良い二人の制服姿の警備員が現れる。
「よし、行こう」
神主はそう言うと二人の警備員を連れて、小嶋室長室へ向かう。
少し歩き、室長室の前まで来るとノックもせずにガバっとドアを開ける。机で仕事をしていた小嶋は警戒した面持ちでドアの方を向く。
「君は今日で解雇だ。ここに君が新聞記者殺害の指示を出したという証拠となる書類がある。事件の一連の詳細、関係者、資金の流れ、全部をレポートにまとめろ、すぐに。その後、君を殺人罪で告訴する」
それから二人の警備員に向かって、
「彼をこの部屋から一歩も出すな」
神主はそう言うと室長室に背を向けて歩きだし、あとには覚悟を決めたような面持ちの室長だけが残された。




