打算的な考え
思わず彼の顔を見返す。一体どういうつもりでこんなことを言うのか分からない。
――若すぎるから?――
もちろんそれは分かっている。だから、18になるまで当然待つ。
――それとも、私には馬渡さんに釣り合わないから?――
もちろんそれも十分理解している。だから釣り合うように、これから精いっぱい努力する。
そして最後にふっと極僅かだけれど、打算的な考えが頭に浮かぶ。涼くんは私を馬渡さんに取られることに嫉妬しているのではないかと。もちろん機械だから感情なんてものは存在しないとは分かっているけれど、あまりにも人間的過ぎるから感情のようなものがあるかもしれないと思ってしまう。
馬渡さんと結婚後も、涼くんも一緒に居られるように馬渡さんを説得するつもりだから、それは心配ないと涼くんには伝えてあげなければならない。でもその前に彼の突然の発言に、思わず身構えてしまう。彼は私の結婚に反対している。
「いや。それにもうプロポーズを受けると、今返事したから」
「じゃ、すぐに断りの電話を入れて」
「何で突然、そんなこと言うの?今までの涼くんらしくない」
「今日、馬渡さんの元カノに会ったんだ」
「えっ、誰?何で?」
「僕は比呂美さんに命を救われたから、君を守るために行動する。馬渡さんは比呂美さんが思っているような人じゃない」
「何も知らないくせに、そんな勝手なこと言わないで」
彼は私のスマホに触ろうとする。
「僕の頭の中に彼女の動画がある。君のスマホに転送するから見て。これを見れば、考えが変わるはずだから」
「見たくない」
私はとっさに自分のスマホを隠すようにする。確かに馬渡さんに関する情報は多い方が良いに決まっている。
――でもそれが悪い情報ならば?――
折角の私の幸せが壊れてしまう気がする。こんな幸せを今まで感じたことはなかった。バイトと学校の往復のみの毎日。特に友達もいなくて、質素で地味に細々と暮らしていた。今までそんな生活が普通でそれ以上は求められない、と思い込んでいた。
そんな時涼くんに出会い、日常がわずかに変わりはじめ毎日の生活の中で彼との暮らしが唯一の色どりになった。でも、それはやっぱり何かか物足りない。
馬渡さんと結婚すれば、私は普通の人生を送れる。やっと人並みになれる。
涼くんの助言はあながち的外れとは思えない。多分根拠のあることだと思う。でも今は彼の動画を見れない。もし見ると私の今の幸せが壊れそうで、それがとても怖いから。




