右手の人差し指
涼は通りに出て新宿駅に向かう。歌舞伎町のセントラルロードへ向かう狭い路地を歩いていると、通りの端の3人組がスマホの画面と涼の顔を見比べ、彼の前に出て行く手を阻む。
「よう、兄ちゃん。ちょっと話があんだけどさー」
3人は服装はかなりラフなもので、まあ普通の人でも着る感じだけれども、顔つきはにやけていて初対面の人に対して取るような雰囲気でなく、明らかに普通の社会生活を送っていない感じ。
3人は彼を近くの雑居ビルの地下への狭い階段の踊り場へ連れ込む。
「俺らのさー、世話になってる人のこと、こそこそ嗅ぎまわるの、止めてくんない?」
彼らが馬渡に依頼された人なんだと気づく。こんな3人ならすぐに片づけられるけれど、まだ若そうだし、どうしようかなと悩む。
「おい、なんとか言えよ」
一人が胸ぐらをつかんで涼を壁に押し付ける。
――正当防衛のためにも、彼らに先に手を出してもらった方が良いかな――
「断る」
「あ?」
3人はやっちまおうぜと涼を殴り始める。3人全員が一通り彼を殴ったことを確認すると、彼はまず一人の鳩尾にアッパーカットを食らわせる。ドサッと気を失って一人が倒れる。
残りの二人は急に焦りだし必死に殴り始めるが、涼はさらにもう一人の後頭部にチョップを食らわせて気絶させる。
最後の一人は怖くなり涼と反対側の地下へ走り出すが、B1Fの扉は締まっており袋小路に追い詰められる。
「俺に指一本触れてみろ、ぜってー許さないからなー」
必死にわめきまくるが、涼は彼の片手をつかむと足をかけて彼を転ばせて背中に乗り床に抑え込む。
「誰に言われて僕を襲った?やっぱり馬渡か?」
「死んでも言うかー。ボーケー」
涼はつかんだ左手の小指を甲側へ倒すと、ポキッと音がして小指が不自然に甲に付く。
「うっ。お前、ぜってー許さないからなー」
うめき声をあげながら、さっきと同じことを言う。
「左手の小指はあまり使わない?じゃ、右手の人差し指にしようか?」
彼は今度は右手をつかむと、人差し指をポキッと折る。
彼はうめき声とともに口から白っぽい粥状のものを吐き、
「分かった。分かった。馬渡だ。もう止めて」
と懇願する。
――やっぱりそうか――
涼は床でのたうち回っているあわれな男の背中から立ち上がると、地上への階段を駆け上がる。




