時間通り
翌日、涼がコンビニでバイト中。
レジで会計をしていると、頭の中にピコンっと割込みが入る。何だろうとそちらへ意識を集中させると、バーチャルに作り上げたSNSのアカウントにDMが届いている。昨日会った馬渡の元カノ、ひとみからだ。
“もう一度会えない?”
相変わらずため口だな、と思いながら、
“良いよ”
頭の中のバーチャルSNSで返信するとすぐに、
“じゃ、今日の7時に同じ場所で”
――ずいぶん急だなあ――
でも、話が聞けるなら行くに越したことは無い。新宿まで出るのは少し手間だけれど、今すぐ出れば、7時にはギリギリ間に合う。店長に急用が出来たから早めに上がらせてほしいと言って了承をもらい、大急ぎで大宮駅に向かう。
新宿駅で降り東口に向かうと、ひとみがいる。今日はちゃんと時間通りに来ている。
「連絡もらえてちょっとびっくり。嫌われたと思っていたから」
彼女は相変わらず無口のまま、向きを変えると歩き出す。
涼は彼女について歩き、少し進んだところにあるドトールに入る。席に着くと、彼女はスマホを取り出し彼に動画を見せる。
「見て良い?」
無反応なので、彼は良いと判断して彼女のスマホを覗き込む。
それはとても直視できるような内容のものではなかった。馬渡がひとみに殴る蹴るの暴行している動画だ。彼女は半裸で泣き叫び、髪の毛をつかまれ引きずり回されていた。場所はどこかのホテルの一室のよう。
音声をわずかに上げると、彼女が必死に許して許してと懇願している声が聞こえ、それに対して馬渡が
「なんで金持ってこないんだよー、この役立たず」
とか、いろいろな言葉で彼女をなじる声が聞こえる。彼女は顔を殴られ鼻血が出ていた。
その時ブーっと注文の商品の準備完了のブザーが鳴る。涼はコーヒー2個を取り席に戻る。
一通り動画を見終わると言葉が出ず、どう話を切り出せばよいか分からない。
「あんたの知り合い、馬渡にプロポーズされたんでしょ。止めた方がいいよ」
「あっ、そうだね。そのためにこれを見せてくれたの?」
返答はなかったけれど、そうとしか考えられない。
――比呂美さんには馬渡さんとの結婚を思いとどまるように言わないと――




