Aチーム
奈良の石下神社の会議室。小嶋資産管理室長が設定したミーティングに厚東弁護士と神主が呼ばれ、集まっていた。
小嶋の隣には、若い調査員、山田が座っている。小嶋が口火を切る。
「神主さんが、都内での元新聞記者殺害事件の調査を総務室に指示されたと伺いまして、その件で偶然こちらで情報が入りましたので、ご報告させていただきます。詳細はこちらの山田から説明いたします」
と、隣の山田の方を振り向く。
神主は黙って彼の方を見ると、山田は話し始める。
「先日都内で発生した元新聞記者、朝比奈夕子氏の殺害事件に関して、犯人が分かりました。張宇轩、ちょうゆーしゅえんという、中華人民共和国福建省出身で、元人民解放軍南部戦区第27集団軍隷下第93軍所属の兵士です。軍内部の格闘技大会等で数度の表彰経験があります。2021年に35歳で人民解放軍を除隊後フリーランスに転向、その後は主に東南アジアのシンジケートの用心棒として生計を立てており、直近はミャンマー北部山岳地帯のSS園区において詐欺組織に雇われていたようです。彼が朝比奈氏が殺害される2日前に日本に入国したことを確認いたしました。また殺害当日に羽田からタイへ出国しております」
神主は黙って話を聞いている。
「一方、依頼主の方ですが、シンガポールの商業銀行、Bank of Singapole Commercial International、略してBSCIという中東ユダヤ系金融機関です。よく言われる通りユダヤ系金融機関はAチームと呼ばれる暗殺などを行う実力行使部隊を保持しており、そこの口座から張に対して送金を確認いたしました。朝比奈氏はタイへの渡航経験があり、バンコクでのモノレール開発事業に絡みBSCIのタイ政府高官への収賄を記事にしており、その件で朝比奈氏が邪魔になったものと推測されます」
一気に山田は話す。小嶋が
「ちなみに、彼は中国国籍のため、犯罪者引渡条約が適用されませんので、タイからの身柄引き渡しは不可能と思われます。まぁ、やったもん勝ちというやつですな」
神主は黙って聞いているが、やがて山田に向かって口を開く。
「ありがとう。君はもう下がってよろしい」
山田は鋭い突込みなどが来るか身構えていたが、何もなく拍子抜けした顔をして、小嶋の方を向き確認を取ると、部屋から出ていく。
「で、実はどうなんだね?」
神主が小嶋の方を向く。
「えっ、今の説明の通りかと」
小嶋は意味が分からないという表情をするが、神主は彼をじっと見つめる。小嶋が助けを求めるように厚東の方を向くと、彼はぷいっと横を向く。
「まさか、私一人に責任を押し付けるつもりじゃないだろうな。汚いぞ。失礼する」
小嶋は机をドンと叩くと、そう言い残して部屋から出て行く。厚東は困ったもんだという表情をわざと作り、彼の後ろ姿を見送った。




