底辺臭満載
翌日、涼は香織から聞いた馬渡の元カノに会いに、再び新宿に来る。
彼女が働いているという風俗店の名前は聞いていた。ネットで検索するとすぐに出てくる。けばけばしいサイトで、1時間1.5ポッキリが売りという底辺臭満載。源氏名も聞いていたのでキャスト一覧の中からすぐに誰が元カノか分かり、予約をして新宿駅東口で待ち合わせをしていた。
約束の時間になって周囲を見渡してみるが、それらしき人は見当たらない。事前に聞いていたSNSのIDにチャットしてみるが返事はなし。10分ほど待ってみる。
――ドタキャンされたかな?――
そう思った時、一人の女の子が近づいて来て彼をじろじろ見る。
「ひとみさん?」
彼が聞くと、コクリとうなずく。馬渡の元カノだった。彼女は涼を不思議そうにじろじろ見続ける。
「立ち話もなんだから、ちょっと歩こうか?」
彼女は無反応。涼は歩いて良いものか分からなかったが、彼が歩くと付いてくる。
「この辺り、詳しい?」
またも無反応。他に色々話を振ってみるが全く無反応で、無言のまま彼の後を付いてくる。最初に会った時から気になっていたのだけれど、彼女の目は完全に死んでいた。普通の人とどう違うか表現が難しいのだけれど、目力が全く無い。ここまで死んだ魚の目のような人も珍しい。
――もしかして、何か軽度の知的障害っぽいのかな?――
「お腹空いている?何か食べる?」
と聞くと、
「ホテル」
とだけ、初めて答える。
ホテルで話を聞こうと歌舞伎町を通り抜けて、新大久保方面のホテル街へ向かう。綺麗そうなホテルに入る。部屋に入ると彼女はさっそく服を脱ぎだすので、涼はポケットから紙幣を出し彼女に渡す。彼女はちょっと戸惑って、
「後払い」
と言う。紙幣が万札3枚あるのを見て首をかしげる。
「ちょっと話を聞きたいんだ。馬渡さんの」
そう言うと、彼女は彼をじっと見つめたが、
「変だと思った」
ポツリとつぶやく。
「うちの店の客、ハゲ・デブ・チビばかりだから。なんであんたみたい若い人が指名したのかなって?」
――なんだ、普通に会話できるじゃん――
彼は備え付けのポットでお湯を沸かし、ティーパックでお茶を作ると彼女に出す。
「馬渡さんの元カノだって聞いたけど、彼はどんな人?」
彼女は不信の目で涼を見る。
「なんで?」
「僕の友達の女の子が、馬渡さんからプロポーズされているんだ」
「帰って」
間髪入れずに、食いつくように言われてびっくりする。
「話したくない理由とかも聞けない?」
「帰って。大声で叫ぶよ」
取り付く島もない。
彼はあきらめると、3万円を机の上に置いて部屋を出る。




