聖徳太子
翌日、石下神社の神主室で神主が厚東との打ち合わせ後に、切り出す。
「昨日、埼玉のあの子から電話があって、養子は断るそうじゃ。YouTubeでの神社PRはしっかりやってくれるそうじゃ」
「はぁ?」
まじまじと神主の顔を見る。
「それで、はいそうですかと引き下がったんか?」
「そうじゃが」
「あの小娘は全く何を考えているんや。正気の沙汰か?自分が何を言っているのか分かっとらんのや。卑弥呼の子孫を公式に名乗る、つまり真の大王家の正当な当主になるっちゅうことをみすみす逃がすということなんや」
「まあ、本人が嫌だと言ってるんじゃ。仕方ないじゃろう」
「いや、そういう話やないんや。物部家こそが卑弥呼から繋がる真の王朝やっちゅうことは君も分かっとるやろ」
神主は無言でうなづく。
「歴史的には聖徳太子は推古天皇の摂政と言われとるが、史実は逆で、聖徳太子つまり押坂彦人大王が大王で、推古天皇はその妻や。それが史実なんや。天皇とは大王の妻という意味なんや」
神主はうなづく。
「天皇家と大王家は、並列に存在していたんや、当時は。その大王家の当主になれるっちゅうのに、あの小娘は全く何を考えとるんや?」
「今どき、血なんていうのは流行らんだろう。婿養子という仕組みがある以上、血の意味はもはや無きに等しい」
「いや、やからこそ、血が意味を持つんや。昔、男は戦いなどでよう死んだから、女系で血の連続性を保ち、そこに優秀な男を引き入れることで一族の生存を図ったんや。そして秦・藤原連合の天皇家の実体は藤原家やから、藤原家が両家を支配しやすいように、表向きの天皇家側は平安時代以降男系になったんや」
「そんなこと、彼女に言っても分からんだろう」
「わいが説得したるで。彼女にとっても、物部一族にとってもメリットしかあらへん」
「あまり無茶はせんでおくれ」
「あの子の気が変わるようなネタ、いくつか探してくるわ」
そう言って、彼は部屋を出て行った。




