↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
60/85

ソイLKメトロ通り

夜なのにムッとむせ返るような蒸し暑さ。生ごみと埃の混じった匂いが充満している。通りの両側には水着姿の女性が並んでいる。ただ全体的に背が低く、胴体が日本人より前後に厚い傾向がある。そして顔つきがさっぱりしている子が多い。

ここはタイのパタヤのソイLKメトロ通り。タイの中でもバンコクと並んで有名な歓楽街。

ネオン煌びやかなある店から一人の男が出てくる。がっしりとした体格で角刈り頭。この店で現地の女と事をなしてきたばかりだ。

今日で3店目。先週パタヤに着いてからずっとソイLKメトロ通りに通いっぱなしだ。普通ならそんなに金が続かないが、彼は金を持っている。それもかなり大量に。

こんなに割の良い仕事は初めてだった。

今まではミャンマー北部の山岳地帯のSS園区というエリアで、詐欺集団の用心棒をやっていたが、給料は雀の涙ほど。仕事内容は詐欺のかけ子が逃げ出さないよう見張ったり、逃げ出したかけ子を追いかけて捕まえ見せしめに痛い目に合わせる。そして何度も逃げ出したかけ子は少し離れた森林に連れて行き撃つ。これが面倒だった。なぜなら死体を埋める穴を掘らないといけないから。他に職が無いからやっていただけで、選択肢があればすぐに乗り換えるつもりだ。

人一人埋められるほどの大きさの穴をスコップ一つで掘るのはかなりの重労働で、1日1つがせいぜい。だから同時に2人脱走されると穴を二つ掘る必要があり、夜にはくたくたになる。それなのに給料に上乗せ分はない。正直やってられなかった。

そんな時昔の知り合いから、日本人が仕事内容を問わず動ける人を探していると聞き、迷わず手を挙げた。

休暇をもらいヤンゴンまで出る。仲介人と合流後、約束のレストランで日本人と会った。

仕事内容は日本へ行き、ターゲットの殺害。殺害方法は問わないが銃は使えない。ターゲットは日本に着いてから連絡があるが、要人ではなく一般人。殺害後はすぐに空港まで送るので出国するのが条件。前金半分、仕事終了後残金半分。

引き受けることにして、パスポート取得後すぐに日本へ入国。ターゲットは20代後半の女性。言われた住所へ行き、呼び鈴を押すとターゲット自らがドアを開けたのでそのまま押し入り、ナイフで殺害。1分もかからなかった。

近くで待機している車に乗せられ、そのまま羽田へ直行し出国。バンコクで残金を受け取った。信じられないほど楽な仕事。おまけに報酬額も良い。

聞いた話だと、殺害の相場は外国人の場合一人当たり100万バーツ。交渉の際に吹っ掛けて150万バーツと言ったら、そのまま払ってくれた。

「こんなことならもっと吹っ掛ければよかった。日本人はちょろいよ。次はもっと強気に出てやろうか」

そんなことを考えながら、通りの左右に並ぶ女を見定めながらネオン輝く夜のソイLKメトロ通りを歩く。通りには時々酔いつぶれた客が寝転がっている。

そんな喧騒の中だから、後ろからスモーク窓ガラスの黒塗りの車が音もなくゆっくり近づいてくることに彼は気づかない。

車は彼の隣を通り過ぎる際に、パワーウィンドーをわずかに開ける。その隙間からサイレンサー付きの銃口の先端がちょっとのぞくと、シュッシュッシュッと数発の発射音がして、彼はガタッと崩れ落ちる。そしてその場に倒れ、酔っ払いの隣に転がる。

車はゆっくりと一定の速度のまま何事も無かったかのように過ぎ去っていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。