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YouTube

「YouTubeに出てみない?」

彼が突然口を開く。

「僕、YouTuberやっているんだ。古墳の調査やその調査旅行などを動画に撮って上げている。君が卑弥呼の子孫として出てくれれば、すごくインパクトあると思うんだ」

「えっ!?」

そういう展開になるとは予想していなかったのでびっくりする。直感的にあまり気が乗らない。

私はもともとSNSは見るだけで、自分からはほとんど書き込まない。ましてや自分の顔写真をアップしたことは一度もない。自分をそんなに可愛いと思っていないから。

それに、クラスの人たちからの反応が予想できない。動画をきっかけに話しかけてきてくれる人がいるかもしれないけれど、目立つとあまり良い印象を持たれないかもしれない。

「それは、ちょっと、考えさせてほしいです」

――大宮まで来たのは自分のYouTubeチャンネルに出てほしかったからなのね――

遠いところ、遺伝子検査の結果を説明するためだけに来たのではないとは思っていたけれど、その本当の理由が分かり安心する。何かのセールスなら断るのが大変と思っていたから。

YouTubeに出る件はあまり乗り気でないので、断って今日はもう家に帰ろるつもり。

いつの間にかアイスコーヒーは空になっている。

「場所、変えようか?」

彼にそう言われて店を出る。通りのあちこちの街灯にお祭りのビラが貼ってある。

“氷川神社 神幸祭”

「こういうの、興味ある?」

「そうですね、でも一度も行ったことないです」

「良かったら一緒に見に行かない?」

「良いですよ。私の家に帰る方向なので」

二人で一宮通りから参道に抜け、神社を目指す。参道沿いにはポツリポツリと屋台が出ている。

氷川神社の三の鳥居を抜け、境内に入る。お祭りがあるせいか、いつもより人が多い。

しばらくすると、雅楽が境内の奥の本殿の方から聞こえてくる。そしてぞろぞろと昔の衣装を着た人の行列が歩いてくるのが見える。

「世が世なら、この人たちはみんな君の家臣だね」

とっさに理解できず、不思議そうな顔をすると、

「だって卑弥呼の子孫なら、神社の一番トップに当たる訳だから」

「そうなるのですか?」

「そうだよ。日本中の神社は神道で天皇を頂点にしているけれど、卑弥呼は天皇よりも前の時代だから、卑弥呼の子孫となれば天皇よりも正当性はあるよ」

「そうなのですね」

行列の先頭が目の前を通り過ぎていく。

「もし今、女王だったとしたら何したい?」

「そうですね、何だろう?」

ちょっと考える。

「海外旅行でも豪邸に住みたいでも、何でも叶うよ。ブランド物を集めるでも」

「みんなに幸せになってもらいたい」

「・・・」

彼は不思議そうな顔で私を見つめた。そして、

「君はとても優しいんだね」

とつぶやいた。


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