↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
5/86

箸墓古墳

「箸墓古墳って知ってる?」

突然質問されてびっくりする。

「いえ、知らないです」

「じゃ、邪馬台国は?」

「学校の授業で聞いたことあります」

「どこにあるって、習った?」

「確か、北九州か、近畿の2説あるって、聞いた気がします」

「うん。まあ、そうだね。でも学界ではほぼ近畿説で決定なんだ。大体、邪馬台国って中国の書籍では邪馬対って書いてあるんだけど、それってやまとの当て字だから。邪馬台国イコール大和国、つまり大和朝廷で、奈良なんだよ」

「そうなんですか」

「邪馬台国といえば、卑弥呼って聞いたことある?」

「はい、確か邪馬台国の女王ですね」

「うん。彼女の墓が箸墓古墳と言われているんだ。これもほぼ学会では確定な感じになっているんだけど、今回、僕たちのチームがそれを確認した。箸墓古墳に埋葬されていた人のDNAが女性であったことと、卑弥呼が中国の魏からもらったとされる剣2本が奈良の橿原市の石下神社に奉納されているんだけれど、その柄の部分から採取できたDNAも女性のもので、それが箸墓古墳のDNAと一致したんだ」

話についていくために必死に集中する。

「つまり、邪馬台国は今の奈良あたりにあって、その女王の卑弥呼の墓は桜井市の箸墓古墳で、彼女のDNAも分かっている。ここまでは良い?」

「はい」

彼はもう1枚、別の紙を封筒から出した。

「これが卑弥呼の遺伝子結果なんだけど」

私の遺伝子結果の紙と、卑弥呼の結果の紙を並べる。彼は2枚の紙の波線のグラフを指さした。

「この2つ、そっくりだと思わない?」

私は波線のグラフを端から見比べてみる。

――確かに似ている。いや、ほぼ同じ――

じっと私の顔を観察している彼の視線を、私は感じる。

「そうですね」

「これはミトコンドリアのDNAのグラフで、ミトコンドリアっていうのは細胞の中にある、さらに小さい細胞のようなものなんだ。これは母親から子供へ受け継がれるDNAなんだ。男の子も女の子も母親から受け継ぐけれど、次の世代に伝えるのは女性なんだ」

「と言いうと?」

「母親からしか子供に遺伝しない。父親は関係ない。君と卑弥呼の遺伝子の相関を計算してみると、現在確認されているDNA情報からは、卑弥呼と同じ母系の系統に属する可能性が99.9%を超えたという結果だった」

「つまり?」

「君は卑弥呼の直系の子孫ということ。それも女子直系。女王という意味では、女子直系は正真正面の正当な女王様ってところかな?」

にわかには信じがたい。

うれしいとも思わないけれど、嫌だとも思わない。実感がないし。何とも言えない。それにさらに言うと、

――もしそうだったとして何か変わるのかしら?――

多分、何も変わらない。

どう答えるか考えあぐねて、しばらく沈黙する。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。