フードの男
涼は池の反対側から公園の外周通路に出ると、グルっと大周りをして比呂美の後ろの人混みのさらに後ろの茂みの中に回り込み、そこから比呂美の後をつけていたフード男を確認する。フードの男はずっと比呂美を見ている。
ボンッ、ボンッ
花火は連続で打ち上げられていて、観客は皆上空を見上げている。座らずに通路で立って見ている人たちは見やすい場所を求めて時間とともに移動する。
フードの男の周辺に人通りが減った瞬間、涼はフード男の方にダッシュで走り寄ると、体当たりして近くの茂みの中に押し倒す。フード男は一瞬倒れかけるもすぐに体勢を立て直し逃げようと走り出すが、涼が後ろから背中に抱き着いて押し倒し、二人重ねて雑木林の茂みの中で倒れこむ。
フード男は涼をバックで蹴るが、涼は片手をフード男の首に回し締め付ける。フード男は最初はジタバタしていたが、段々動きが遅くなりやがてぐったりと抵抗を止めた時、涼が腕を首から話す。フード男はゴホッゴホッとむせ返りを繰り返し、吐きそうになりながら涼の体の下で丸くなる。涼がフードを外し顔を見ると声を上げる。
「あれっ、またお前か」
桐生だった。
「何で比呂美さんを付け回しているんだ?」
桐生はまだ息が荒くむせ返しているが、落ち着いてくると、
「重いから、そこどけよ」
と涼に言う。
涼は彼の上から降りる。
「比呂美さんと顔見知りだから、直接声かければいいのに。その方が彼女も喜ぶ。何でストーカーみたいな真似するんだ?」
「仕事だよ、仕事。天上さんから言われたんだよ」
「仕事?何の仕事?」
「矢野さんの交友関係を調べろって」
「天上さんがそんなことを?何で?」
「知らねーよ」
涼は考える。今比呂美さんの周りで何か変わったことと言えば、馬渡さん関係か神社関係。どっちから雇われたのだろう?
以前天上さんたちと伊豆半島沖の島で会った時、かなり財力のある組織に思えたから、石下神社から依頼を受けたとしか思えない。
「石下神社からの仕事?」
「いや、だから知らねーって言ってるだろ。天上さんの上は、俺は知らねー」
これ以上は埒が明かない。まあ、桐生さんなら怪しいことはないだろうし、比呂美さんの交友関係を調べるのが目的であれば、見てるだけだから問題ないだろう。
「バカ力で、怪物並みだなあ、あー、イテテテテ」
と言いながら彼は首周りをさする。
「悪かったな」




