夢の中
それからの数日間は、まるで夢の中のようだった。
何をしても充実感を感じられるし、何をしても楽しめるし、前途洋々という感じ。今までいかに自分が追い詰められた状態で毎日の日々を過ごしていたかがよく分かる。それが普通の状態で慣れてしまっていたから、何とも思わず毎日を過ごしていたけれど、本当はこんな充溢した日々を送れたんだ。
あの日以来、毎日夜に馬渡さんとSNSのアプリで通話する。たわいもない話。
日中も時々、SNSのDMが来る。こちらもたわいもない話。でもDMが来るだけでも舞い上がる。
"一緒に住もう"
数日後、彼からそうDMが来る。早い展開にびっくりするけれど、嬉しい。私は学校があるから大宮から離れられない。そう伝えると
"僕が大宮に住むよ"
返信が来る。舞い上がってしまう。馬渡さんとずっと一緒にいられるなんて。でも考えてみると、この家は2人で住むには狭い。以前は母と2人住まいだったけど、それは私が子供で小さかったから。それに今は涼くんもいる。
"この家はとても狭いから、2人は無理かも"
相談すると
"新しいマンション、探そう。比呂美さんが満足できるような所"
と驚くようなことを言ってくれた。私はどんな広さが良いかとか、どんな間取りが良いかとか、いろいろ想像する。
奈良からの帰り、東京駅で突然キスされたけれど、私は彼のプロポーズに対してまだ回答していなかった。ちゃんと回答しなければと思っているけれど、私の方から切り出すのは厚かましい気がするので、切り出せずにいる。もちろん答えはOK。
彼の方からも何も言ってこないけれど、きっと電話越しに私の回答を聞くのは悪いと思って、直接面と向かって回答を聞きたいのだろうと、勝手に予想している。
そして涼くんには、馬渡さんとのことをいずれ話さなければならないと思っている。
――もし私が結婚する言ったら、涼くんはどう思うだろう?――
まず彼の意見を聞きたい。
――彼は喜んでくれるかな?祝ってくれるかな?――
そしてもし実際に結婚して同居するとなった時、私は涼くんも一緒に住んで良いと思っている。というのも彼はアンドロイドだから。事情を説明したら、馬渡さんなら多分良いと言ってくれると思う。
問題は涼くんがそれでよいと言ってくれるかなんだけれど、彼の性格から考えるとすんなり受け入れてくれる気がする。もともと彼の記憶が戻るまで居候するという話で、記憶が戻れば彼は元居た場所に帰りたいと言っていたから。




