サーバールーム
事務机の横を通り過ぎてさらに進むと、今度はオープン形式の商談スペースがあり、そのすぐ近くにさっき通り過ぎた”日本文化継承財団”の正面玄関がある。
――あっ、中で財団とホワイトストーンはつながっているんだ――
財団とホワイトストーンは入り口は別だけれど、2つの団体のオフィス間に壁はなく、事務所はお互いに行き来できる状態になっている。
普通、隣のテナントとは別会社だから、プライバシーやセキュリティーの観点から間に壁を設置するのが普通だけど、ここにはそれが無い。
――まあ、両者が納得しているのならば問題ないけれど――
経費の観点から壁を設置するのを省いたのだろうか。双方がそれで合意しているのだろうから、お互いのんびりした組織なのだろう。
「じゃ、こっちは逆方向か」
彼はもと来た方向へ逆戻りし、サーバールームを探す。重要データは書類にはせず、コンピューター上のファイルとしてサーバーに保管されているからだ。
暗闇の中を非常灯のわずかな明かりと窓ガラスからの夜景の光をもとに、事務所内を進む。しばらく行くと社内用会議室のゾーンがあり、その隣が倉庫になっている。さらに狭い通路を進むとその奥に何も標識の無い部屋がある。多分サーバールームだ。彼は掌にダミーキーを送り、その扉を開ける。当たりだ。
天井近くまでラックが並び、横置きのサーバーがみっしりと詰まってピカピカと小さなLEDライトが点滅し、その排熱処理のため空調がギンギンに効いている。サーバールームは20畳くらい。それほど広くない。日本支店のデータだけならば、この程度の広さで収まるのだろう。
一番端に制御用のパソコンが1台置いてあるが、彼はそれには目もくれずサーバーラックの裏に回りハブを探す。
「こっちの方が効率良いんだ」
彼はハブの上に手を置くと、そこからネットへ侵入する。
管理者用のアカウントを見つけ、それに成りすます。マウントしてあるディスクを探し、元新聞記者でYouTuberの朝比奈夕子の名前で一斉に検索をかける。
全くヒットしない。
――あれっ、彼女の死にホワイトストーンは無関係なのかな?――
暗殺などの話は、資料には残さずに口答だけで済ました可能性はある。でも殺害犯への送金記録とかは残っていそうだけれど、そういう怪しい記録も特にない。
――ホワイトストーンは全くハズレだったかも――
出てくるのは、主に今日本で進めている南青山のUR跡地再開発計画の資料ばかり。地権者との合意文書とか、予算見積もりとか。彼には専門的過ぎてよく分からない。ざっと見た感じ普通の不動産開発と変わらない気がする。
――そろそろ帰ろうかな――
そう思った時、サーバールームの外の通路で人の気配がした。




