人感センサー
そんなことを考えているうちに、パシフィックフィナンシャルセンタービルが目の前に迫ってくる。左右の手綱を引いてうまくバランスを取りながら屋上のヘリポートの着地する。
手早くパラシュートを脱ぎ捨て物陰に隠すと、屋上の非常口の扉に駆け寄り鍵の種類を確認する。カードキーのタッチ式。これなら彼にはお手の物。掌を近づけアルゴリズムを解析し掌にダミーキーを生成する。でも解錠を一瞬ためらう。時刻は午後9時過ぎ。まだ残業している社員がいる時間だ。
彼は物陰でしばらく待つことにする。
時々屋上から下のフロアの照明の消え具合を確認する。時間とともに段々照明が消え明るいフロアが減ってくる。
午前0時過ぎ。終電が無くなる時間。ほぼ消灯を確認すると彼は動き始める。
非常口を開け、薄暗い階段を下りる。各階の扉に数字が書いてあり、25の数字のドアをゆっくり開ける。フロア内は真っ暗。目を赤外線センサーモードに切り替える。非常口の前はエレベータホールらしい。天井に3mおきに人感センサーが埋め込まれている。誰かがエレベータホールに入るとセンサーが感知し、警備室で警報が鳴る仕組みだろう。
彼は電磁波を照射しセンサーをハックし無効化する。そっとエレベータホール内へ進む。警報は鳴らずハッキングは上手くいったようだ。
そのままホールから廊下を進む。どこかにホワイトストーンの日本支店の入り口があるはず。少し進むといかにも正面玄関といった感じの大きめの扉がある。ここかなと思ったら”日本文化継承財団”とプレートがある。
――隣のテナントか――
もう少し進み角を曲がるとガラス張りの自動ドアがあり、ドアに”The WhiteStone Grp.”とデカデカと書いてある。
彼はドアの上の方を探り、手から電磁パルスを照射して制御回路を壊し、手動でドアをゆっくり押し開ける。ドアの向こうは受付になっており、そのすぐ後ろは顧客との商談スペースがいくつか並んでいる。ここも同じく天井に人感センサーが埋め込まれている。
――全部のセンサーをハックするのはめんどくさいな――
近くの壁を探すと、警報装置の制御パネルがある。掌をパネルに近づけアルゴリズムを解析し、ダミーキーをパネルに送る。パネルに”警戒モード 解除”と表示される。
これでこのフロア内は人感センサーがオフになり、自由に動ける。
彼は商談スペースの横を通り過ぎると更に奥へ進み、扉を開ける。そこは普通の事務所で、壁際にはロッカーが配置され、フロア内には事務机が整然と列になって並んでいる。フロアはかなり広く、突き当りの外壁の窓ガラスはかなり先にある。
――あれっ、予想以上に広い――
エレベータホールからの廊下の長さと入り口からの距離で、中の広さをおおよそ想定したのだけれど、それよりずっと広い、広すぎる。
――なんか変――




