大手町
ちょうどそのころ、涼はそこから直線距離で200mほどのところにいた。
彼は東京駅から徒歩で大手町の高層ビル群の中を皇居方向へ歩く。道が広く歩道の幅も確保されているから、意外と高層ビルの圧迫感を感じない。むしろ広々とした開放感すら感じる。
しばらく歩くと、目当てのパシフィックフィナンシャルセンタービルがある。モニュメントを横目に中央エントランスの自動ドアをくぐると、3,4F分の巨大な吹き抜けのロビーがあり、フラッパーゲートの奥にエレベーターホールがある。ゲート横には警備員が立っており、天井には半円球の透明ケースの監視カメラがある。フラッパーゲートを通るためには、出入りしている社員が首からぶら下げている入館証が必要らしい。彼ならばそんなものは手のスキャナーで簡単に突破できるが、警備員が社員の出入りを目視で確認しているため、カード無しで通行したら不審がられてしまう。
「正攻法では無理そうだな」
壁のフロアガイドを見上げる。25FにThe WhiteStone Grp.と書いてある。
彼はエントランスから出ると、裏口へ回り地下の車寄せへ向かう。地下駐車場へ簡単に入れたものの、エレベータホール前には同じくフラッパーゲートがあり、横に警備員がいる。
「オフィスビルにしては、やけに警備が厳しいな」
外に出ると、歩道から周囲を見渡す。
「地上と地下からが無理なら、残るは空からか」
高層ビル群の中でひときわ高いビルを見つける。なんだろうと近づいてみると、ラフな私服姿の人の出入りが多い。またエントランス周辺に花が飾ってあったりと他のビルと比べて華やか。敷地前の石のプレートに、ロイヤルプリデンシャルホテルと書いてある。
ホテルなら部外者が入っても怪しまれないだろうと思い、彼はエントランスの自動ドアをくぐりロビーを見渡す。
――さて、一体どうやってパシフィックフィナンシャルセンタービルへ行こうか?――
宿泊したとしても各部屋の窓ガラスは開かないし、また上の方の部屋が空いているとは限らない。
何か良い案が無いかなあと漠然と考えていると、ナイトプールのポスターが目に留まる。屋上に温水のプールがあり、今日はイベント開催中らしい。
――これだ――
彼はナイトプールを申し込むためにフロントへ行く。非宿泊客と前売り券の無い客は入場料1万と言われる。予想以上に高くて驚くも、言われるままに払い、エレベータで最上階へ行く。
シースルーのエレベータから赤い西日が見える。夕方近くなっていた。
最上階へ着くと入場券を見せて更衣室へ入るが、着替えずにそのまま素通りし服のままプールサイドへ行く。




