中世の古城
翌日、近鉄で橿原神宮前駅まで行き、改札を出ると駅前ロータリーでタクシーを拾い石下神社まで行く。事前にスマホの地図で場所を確認していて、山の中にあるんだなあと漠然と思っていたけれど、山の入り口に石下神社と書かれた大きな石柱が立っていて、山全体が石下神社の境内なんだと気づく。
タクシーは山道をうねうねと進み、少し行ったところに駐車場があり、そこで降りる。
大宮の氷川神社は平野の真ん中にあるから、神社とは人通りの便利なところにあるイメージだったけれど、この石下神社は小山の上にあり神社へ続く道の入り口には門があり、戦乱での防御を意図している感じがまざまざとして、中世の古城のイメージ。神社というより要塞みたい。
――なんか普通の神社とちょっと違う――
“石下神社”と書かれた標識に従って大鳥居をくぐり、きれいに整備された参道を進む。参道の周りは鬱蒼とした巨木の森が広がっている。
しばらく進むと朱色の石下神社の楼門が見え、その手前に社務所がある。社務所の受付で名前を言う。
「お待ちしておりました」
建物の中へ通される。廊下を進むと広い日本庭園に出る。庭園の中の屋根付きの渡り廊下を右左くねくねと方向が分からなくなるほど進む。途中大きな日本家屋を数棟通り越す。受付の人に続いて、ある建物の中に入る。
外見は古い日本家屋なのに内装は完全に現代のもので、空調が適度に効いている。廊下を進み、応接室と書かれた部屋の前で
「こちらでお待ちください」
ドアを開けてくれたので二人で中に入る。
中央に小さなテーブルがあり、その両側にフカフカそうな大きなソファーが置いてある。
――どこに座ればいいんだっけ?――
確か上座、下座とかいう決まりがあったはずで、私が下座に座るのは確定だけど、どっちがどっちか分からない。馬渡さんがためらわずに座ったので、その隣に座る。
扉をコンコンと叩く音がして、さっきの受付の人がお茶を持ってきてくれた。お茶を飲みながら、どんな人が来るのかなあとか、どんな話をされるのかなあと少し不安になる。
いつもは饒舌な馬渡さんも静かで、少し緊張しているみたい。




