世界最大
それから気を取り直したように
「白い石の話だけど、多分ホワイトストーンのことだと思う」
「ホワイトストーン?」
「そう。世界最大の投資会社よ。投資といっても株とか債券とかに市場で投資するのではなくて、オルタナティブ投資。直接事業に投資するの。例えばアフリカの鉱山とか、南米のプランテーションとか、中東の石油プラントとか。確か去年、日本の不動産開発に投資するとニュースを読んだわ。でも地元のヤクザとトラブルになって頓挫しそうって聞いたけど、確かそれがホワイトストーンだった気がする」
「すると、僕らが会う予定だった元新聞記者のYouTuberはそのホワイトストーンを調べていたことになるんだけど、ヤクザが絡むのなら、ヤクザに殺された可能性もあるのかな?」
「多分、それは無いと思う。揉めていたヤクザっていうのはホワイトストーン相手の立ち退き料目当てだから、あくまでも合法的な嫌がらせなのよ。それに殺人なんかしたら捕まってしまい、元も子もないから」
「じゃ、ホワイトストーンが?」
「それも考えにくいわ。ホワイトストーンは超巨大企業よ。一介の、それもただのYouTuberなんて吹けば飛ぶ存在だし、相手にもしないわ。私に分かるのはここまでよ。それ以上のことは自分で調べて。確か都内にホワイトストーンの日本支店があったと思うわ」
「分かった、ありがとう」
そう言うと、涼は帰り支度を始める。
「本当はお店の前で白い石と言われて、すぐにピーンと来たのだけれど。勿体ぶってごめんなさい」
「いいよ、いいよ。僕も久しぶりに話せて楽しかった」
なんでここまで相手を心地よい気にさせる言葉をサラッと出すことができるのだろう、とソフィアは思った。きっとそうプログラムされているのだろう。でもそれがソフィアを誤解させてしまい、彼女はその心地よさに依存してしまいそうになる自分を恐れる。
「そうだ。今後うちに遊びに来てよ。そして比呂美さんと友達になってあげてほしい」
「彼女と?」
「そう。比呂美さん、本当に良い子なんだけど、生活するのに精いっぱいで友達と過ごす時間を取れないから、友達が少ないんだ」
「ちょっと考えてみるわ」
彼は彼女の家から出ると、外はすでに暗くなっていた。薄暗い中を歩いていく涼の後ろ姿をソフィアはずっと見ていた。




