空虚さ
「なんで突然、そんなこと言うの?」
彼は椅子から立ち上がると、ベッドの彼女の横に腰掛ける。
「最近気付いたの。今まで強がっていたけれど、本当は普通のただの女の子なんだって。いえ普通じゃない。普通以下」
「・・・」
「外見ばかり取り繕って来たけれど、中身は空っぽで、結局自分が何をしたいのかも分からなくて、だから何をしても中途半端で、だから前の作戦で失敗して、大勢の人に恨まれて。ロシア本国では私は死んだことになってる。ロシアに行ったことも作戦に就いたことも自分の意思かどうかすらも分からない。日本でとりあえず働いていても、それが自分の意思か分からない。この空虚さがすごく不安なの。毎日押しつぶされそうなくらいに。でも」
「でも?」
「あなたとなら、私は目的を見つけられる。あなたなら、私のこの空っぽの空虚さを満たすことが出来る。あの頃のように」
「・・・」
「結局私は一人では何も出来ないダメな人間だったのよ。わがままで、怠け者で、無能で、でも根拠の無いプライドだけはあって。だから誰の役にも立たないし、誰からも相手にされない。生きる価値の無い人間のクズ、、、」
その時、涼が突然ソフィアにキスをした。
「そんな言葉は口に出しちゃいけないよ。口に出すと、言葉は耳から入って二重に深層心理に暗示として刻み込まれちゃうから」
彼女は彼をじっと見つめて動かなかったが、やがて目をつむるとゆっくりとベッドに横になる。まるで彼を待っているかのように。
でも、彼は動かなかった。
「ごめん。キス以上のことは出来ないんだ」
彼女はゆっくりと目を開ける。
「それは機械として、そういう機能が無いということ?それとも彼女のこと?」
彼女というのが、矢野比呂美を指していることだと彼は分かる。
「比呂美さんを裏切る気がするから」
そう答えると、ソフィアはベッドの上で肘を立ててあごを支える。
「ふぅ~ん、そういう関係なんだ」
「いや、違うよ。比呂美さんは淡泊というか、そういう視点が無いんだ。僕も含めた男みんなに対して」
彼女は少し考えてるようだったが、ベッドから立ち上がると、
「シャワー浴びてくるわ」
と浴室へ行ってしまう。




