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ケーキ屋

比呂美が奈良に行って若草山で馬渡と語り合っていた夕方、大宮ではアンドロイドの涼が駅の方へ向けて歩いていく。普段はバイトを終えると直接家に向かい家事の手伝いをしていた。今日はなぜか、彼は中央通りを南へ渡り進む。しばらくすると中層マンションが見えてくる。その1Fはケーキ屋になっている。彼はその店に入っていく。

「いらっしゃいませ」

店員の声がかかる。その中の一人は金髪の白人で、彼女は彼を見ると少し驚き避けるように顔を背ける。ソフィアだ。彼女は白いパティシエの制服を着てカウンターの向こうに立っていた。

彼はカウンター越しに彼女に近づく。

「ちょっと聞きたいことがあるんだけど」

「ご注文は何でしょうか?」

「ケーキじゃなくて、別のことで」

「ご注文は何でしょうか?」

彼が彼女の服の裾を掴もうとすると、彼女はさっと後ろに下がり、

「店長~、言葉分からないです」

店の奥に引っ込んでしまう。

店長が出てくると、涼は

「あっ、良いです」

店を後にする。そして周囲を見渡して店前のベンチを見つけると腰を下ろす。時刻は5時半。

30分ほどして6時少し過ぎになると、店の裏手からソフィアが出てきた。ベンチに座っている彼を一瞥すると、そのまま横を通り過ぎる。

「ちょっと聞きたいことがあるんだけど」

彼は立ち上がり彼女を追いかける。彼女は無視してそのまま歩き続けるが、やがて振り返ると、

「ソルジャーからストーカーになったの?」

そう言って再び歩き出す。

「白い石って、聞いたことある?」

後ろから声をかけるが、彼女は全く聞こえないふりをする。

「先週会う予定だった元新聞記者が調べていたらしいんだ。会う前に殺されたんだけど」

彼女は全く反応せずそのまま歩き続け、ついにかなり古い2階建てのアパート前まで来る。そのまま階段を上り2階の通路の一番奥の扉を開け中に入る。涼も一緒に入ろうとすると彼女は振り返りキッと睨みつける。彼がドアを押さえて閉めさせないので、

「好きにすれば」

彼女はそのまま室内に入る。彼も後に続いて彼女の家に入った。間取りは1R。玄関のすぐ後ろに台所があり、その前に小さな食卓が一つ。そのすぐ横にベッドがあり、それらが家具の全てだった。

彼女はまるで彼がそこにいないかのように、平然と服を脱ぎ始める。外行きの服を脱ぎ下着一枚になると、ベッド下の引き出しからジャージのような上下揃いのナイロン素材の服を取り出し着る。それから台所へ行くと小さな冷蔵庫から夕食の材料を取り出し夕食の準備を始める。

「何ボーっと突っ立てるの?あんた、機械なんだから人に奉仕するのが義務なんでしょ。夕食の手伝いしてよ」


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