似た者同士
私には彼はすごく輝いてはじけていて、私の学校の男子とは全然違っていると映っていた。それは都内の大学生だから、と思っていたのだけれど、親がいなくて毎日がひたむきだったからなのかもしれないとその時初めて知る。
そして私も同じく親がいない。YouTubeに出演するだけの関係では特に言う必要もないと思っていたけれど、馬渡さんの境遇に同情して励ましてあげたいと思った。
「私も親、いないです」
「えっ」
彼は驚いて私を見る。
「なんで?」
「父は私がまだ赤ちゃんの時に出て行ったらしく、母はつい最近病気で亡くなりました」
「じゃ、毎日の生活費は?」
「奨学金とバイトです」
「一人暮らし?」
それは答えに詰まる。一応そうだのだけれど、涼くんと一緒とも言えるし。
「ええ、まあ、一応そうです。でも時々、この間カラオケでの撮影の時に一緒に行った子が近くに住んでいて、良く助けてくれるので」
ギリギリセーフくらいのことを答える。
「そっかー、みんな大変なんだね」
それから私の方を見て、彼は続ける。
「僕ら、意外と似た者同士だったね」
その時の彼の表情は今までのキラキラ輝いた自信満々のイケメンの笑顔とは違って、妙に安心しきって気の抜けた、でも優しさがにじみ出ているような素朴な感じだった。急に親しみが湧いて、初めて私でも手の届く人に思え、何か胸の奥がギュッーと苦しくなるような気がする。
奈良市街の向こうへ夕日が沈み始めている。私たちは若草山を下り、神社がとってくれたホテルへ向かう。
ホテルは池の近くの和風旅館で、かなり高級っぽい。チェックイン後、女中さんに案内されて廊下を進む。私と馬渡さんは隣の部屋。
神社は馬渡さんの分の部屋も予約しておいてくれた。男女だからちゃんと別々の部屋にしてくれている。私の部屋の前まで来ると、私は部屋に入る。彼が私の部屋に入りたいと言い出すのではないかと一瞬不安になる。
「ここまでです」
私は自分の部屋の前で、通せん坊するような形で馬渡さんに言う。
「うん、、じゃ」
彼は隣の部屋に入っていく。取り越し苦労だったみたい。
部屋に入ると浴衣があるので、それを抱えて地下の温泉へ行く。入浴後部屋に戻りしばらくすると、彼から夕食に行こうとDMが来たので、一緒に1Fの食堂へ向かう。
夕食は今まで食べたことないような豪華さだった。伊勢海老のお造りに始まり、ステーキや10cm以上もある丸っとしたエラの形が分かるフカヒレ。普段の食事の1か月分を軽く超える金額はかかると思う。でもそれ以上にうれしかったのは馬渡さんと一緒に話しながら食べれたこと。私は聞き役で彼がいろいろ話してくれるのだけれど、誰かと一緒に夕食を食べた経験が私の記憶の中ではほとんどなかった。
――あー、幸せ――
頭の中ではっきりと思う。メーテルリンクの青い鳥のように幸せは意外に身近な所にあるのかもしれない。




