東大寺
2時間ほどで新幹線は京都駅に着く。近鉄に乗り換えて奈良へ。終点の近鉄奈良駅で降りる。地下の駅なので、地上に出る。時刻は土曜の昼少し前。
外国人観光客が多い。彼らの歩きの流れと一緒に大通り沿いを東に進むと、すぐに緑豊かな公園のような広い空間にたどり着く。
歩きながらなんか空が広いなと思っていたけれど、その理由がすぐに分かった。タワマンが無いからだ。県庁所在地にしては少しさびれているような気がするけれど、こんなくらいが普通なのかしら。東京が普通でないのは分かるけれど、埼玉も東京の隣だから実は日本の中ではかなり異色な場所なのかもしれない。
さらに進むと、鹿がぽつりぽつりと現れる。
馬渡さんは解説しながらスマホのカメラで撮影する。私が鹿とじゃれ合っている絵を撮ろうとするが、鹿も現金なものでただ手招きするだけでは近寄ってこない。仕方が無いので彼は鹿せんべいを買い、私が鹿に与えるそぶりを見せると、やっと鹿が寄ってきた。
「東大寺、行ってみる?」
彼の問いかけに、
「はい」
と答える。中学の修学旅行は京都だったので奈良は初めて。東大寺は確か大仏があったと授業で習った覚えがある。
大きな通りを左に曲がり、少し行くと東大寺がある。拝観料を払い境内に入る。広い庭を超えて進むと大きな建物があり、正面の入り口から大仏のお腹辺りが見えている。
中に入ると確かに大仏は大きかった。寺の柱の一本に穴があり、大仏の鼻の穴と同じ大きさらしく、多くの人が潜るために並んでいる。
「くぐってみる?」
馬渡さんが私に聞くけれど、ちょっと私の体格では通れなさそうな気がする。大人で通っている人もいるので、私もがんばったら通れるかもしれないけれど、大勢の人が見ている前では恥ずかしい。私は首を横に振る。
東大寺を出た後、さらに東の若草山に向かう。なだらかな丘の斜面が広がっていて、鹿が所々に点在している。鹿の糞を踏まないように気をつけながら斜面を登る。少し上ると急に標高が上がるせいか、奈良市街がはるか遠くまで眼下に見渡せる。
「壮観だね」
「ええ、すごくきれい」
私達は斜面の草むらの腰を下ろす。しばらくその絶景に見とれていると、ポツリと馬渡さんが言う。
「もう、東京、帰りたくないな」
「えっ」
不思議に思った。彼は毎日充実していると思っていたから。
「なぜですか?」
彼は話そうか迷っている感じ。それからボソッと、
「もっと、YouTubeでフォロワー増やして再生回数稼ぎたいけど、なかなか大変だから」
――でも趣味でする分には、そこまで再生回数を追い求めなくても良いと思うけれど――




