身辺調査
その日の夜、奈良の石下神社の社務所の神主室。
夜8時過ぎ。神主は今日の業務を片付け、すぐ隣にある住居棟へ帰ろうとロッカーから上着を出す。
トントンッ。
その時ドアをノックする音がし、文献調査室長の武藤が顔を出す。
「神主さん、お時間良いでしょうか?」
「もう帰ろうとしていたところだったんじゃ。明日じゃいけんのか?」
「ちょっと緊急のお話が」
神主は再び執務机に座りなおす。
「なんだね?」
「来月、神主さんとお会いになる関東の高校生の女性についてなのですが」
「うん」
神主が武藤の言葉に注意を向ける。
「神主さんと面会される方は事前に身元確認を行うのが私共の業務の一環でして、特に今回のように社会的な地位が無い方の場合は身辺調査を行います。その際に尾行を付けるということも通常の手続きとして行っているのですが、今日尾行をしていたヤタガラスからのレポートで、その女性が殺人事件の関係者として地元警察に身柄を拘束されました」
「・・・」
「ヤタガラスの一人が被害者のマンションから走り去る男を目撃したことから匿名で通報し、また同時にこちらが普段世話している総務省の族議員を通して県警本部に圧力をかけ、すぐにこの高校生を釈放させました」
神主は胸をなでおろす。
「だったら、何も問題ないではないかね?」
「ただ、一点問題が、、、」
「何だね?」
「その殺害された人物が元新聞記者なのですが、ホワイトストーンについて探っていたらしいのです」
「・・・」
「元毎朝新聞の記者で、ホワイトストーンについて記事を書き始めた後すぐに東北に転勤になりその後解雇されていました。現在は個人で探っていたようです。ホワイトストーンは物部一族の海外での資産管理会社ですので、あまり大っぴらに知られたくはないので、この記者が亡くなるのは私共には結果的に助かったという形にはなるのですが、ちょうど南青山のUR跡地再開発で揉めていた時でもあり、タイミングが良すぎると言いますか、、、」
と言って、武藤は神主をじっと見つめる。
神主は自分の顔に何か付いているのかと思い、顎のあたりを触りそれから服の襟周りをきょろきょろ見渡してハタっと気づく。
「もしかして、わしが殺害を指示したとでも?」
武藤はまだじっと見つめたまま。




