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留置場

――そうだ、警察に電話しないと――

スマホは鞄に入れたままで、廊下に置いてきてしまった。死体のあった部屋からトイレまで這ってくる途中で邪魔だったから。

――もう少し元気になったら、鞄を取りに行こう――

そう思い、横たわったまま床に頭をつける。

ガサガサっと音がする。涼くんはどこかの部屋で何かを探しているみたい。

その時、玄関の扉がバンっと開く音がして、複数の足音がドタドタと聞こえ、すぐに

「動かないで」

と知らない男の声がする。それは私ではなく、涼くんに向けて発せられたみたい。トイレから廊下の方を向くと、数人の警官が家の中に入ってきていた。

――あー、良かった――

と思ったものの、私はすぐに二人の警官に肩を貸されて運ばれる形で、マンション前のパトカーに乗せられる。

「私たちが朝比奈さんの家に入ったら、もう彼女は亡くなっていたんです」

私はそう言っても、

「詳しいことは署の方で聞くから」

としばらくパトカーの中に放置される。やがてパトカーは走り出し、警察署に入ると降ろされ地下の留置場に入れられる。涼くんは別のパトカーで連れてこられたようだった。

――あれっ、私たち、犯人と思われているのかしら――

持ち物は留置場に入る前に全部調べて取り上げられてしまい、誰かに電話することもできない。しばらくすると涼くんも同じ留置場の部屋に連れてこられた。

「どうしよう?」

気持ち悪かったこともあってなかなか声を出せなかったけど、しばらく時間が経ってやっと普通に話せるようになる。彼に聞くと、

「きっとそのうち事情聴取されるから、その時話せば分かるよ。死亡推定時刻や凶器が現場にないことから、僕らが無関係だってことはすぐに分かるから。僕らは犯人にはめられたんだと思う。警察が来るのが早すぎるから」

とのんきに構えている。しばらくすると女性の警官が来て、

「もう出てください」

と言うので、そのまま1Fへ行きカバンやスマホなど荷物を受け取る。

「もう、良いんですか?」

と聞くと、

「ええ。あなた方が被害者の家に入る前に、怪しい人物が出て行ったとの目撃情報がありましたので」

と、あっさりと答える。

私はこれからどうなるかと不安で仕方なかったのに、ずいぶん無責任だなあ、と思ったけれど、その女性警官に言っても仕方ないのでそのまま警察署を後にする。

大宮までの電車の中で沈んだ気持ちになった。誤認で捕まったのもびっくりしたけれど、それ以上に会う約束していたYouTuberの方が亡くなっていたから。動画の中だけでしか動いたり話したりする姿は見たことが無かったけれど、とても魅力的な人に思えていたのに。ショックを今でも引き吊り涙がそっと頬を伝わる。

すると隣の席の涼くんが

「大丈夫?」

と聞いてくれる。

「うん。ちょっとショックだった」

答えると肩を抱いてくれた。しばらくして

「さっきの人の家を調べた時に机の上に取材ノートが置いてあったんだけど、最近の日付に白い石について調査中とあったんだ。彼女はそれについて何かをつかんだような感じなんだ」

「白い石?何かしら?」

「単純にネットで検索しても、漠然としすぎて無数に出てくるから分からない。でもそれが殺された原因のような気がする。何かの虎の尾を踏んだような」

重い気持ちのまま大宮駅に着くと、買い物する気も起らずにそのまま家路に付く。


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