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赤羽

奈良へ行く2週間前の週末の土曜日、私は涼くんと赤羽まで行く。大宮駅から湘南新宿ラインで約15分。近いようで赤羽駅で降りたのは初めて。

それまで、赤羽のイメージは正直あまり良くなかった。大宮でいう南銀みたいな猥雑でどこか怖いイメージだから。でも実際駅から降りてみると思っていたほど繁華街ではなく、しばらく歩くと普通の住宅街でちょっと拍子抜けする。

教えてもらったYouTuberの方の住所は駅から徒歩10分くらいのごく普通のマンション。オートロックなしで無施錠のエントランスから3Fへエレベータで上がる。教えてもらった304号室はすぐ分かる。

ピンポーン

呼び鈴を何回か押す。しばらく待つが返事はない。私は涼くんと顔を見合わす。彼がドアノブを回すと、ドアは音もなく開く。

「あれっ」

私がそう言うと、彼は私をグッと横に押しドアから遠ざける。

「何か変。離れて」

彼はそっとドアを開け隙間から中を覗き込む。それから一人が通れるくらいドアを開けるとその隙間に体を滑り込ませる。

「涼くん?」

声をかけると彼は口の前に指を立てる。隙間から見える家の中の様子は、玄関の先に廊下がある。全体的に薄暗く間取りは1DKくらい。

彼は玄関に入ると廊下を進み奥の部屋に入って、私の視界から消えてしまう。

――勝手に入るのはちょっとまずいでしょ。寝てるだけかもしれないし――

私は彼を止めた方が良いと思い、玄関に入る。

「涼くん。戻ってきて」

返事はない。仕方がないので私も廊下を進む。涼くんは奥のリビングに隣接する台所にいた。ちょうどガスコンロの火を止めたところだった。

「やかんのお湯が沸きっぱなしで、空焚きだった」

「ここの家の人は?」

「見当たらない」

――どこか出かけたのかしら?でも、今日私たちが来ると約束していたのに――

彼は廊下を少し戻ると、途中の部屋のドアを開ける。

「あっ」

彼の声が聞こえ、私は駆け付ける。

最初に目に入ったのは、床に転がる誰かの2本の白い足だった。視線をその先にずらすと、その奥に誰かが倒れているのが見える。

「キャー」

思わず悲鳴を上げてしまう。というのも頭の角度が不自然な方向に曲がっていて、その付け根の首がすっぱりと鋭利な刃物で切られたかのように開いて、きれいなピンク色の肉が見えていたから。周囲にはどす黒い液体つまり血が池のように広まっている。

急に足の力が抜けて、私はその場にしゃがみこんでしまう。ひどい動悸がして息が苦しくなって視野が狭くなって、胸のあたりに逆流してくるものを感じる。

私は四つん這いのままトイレらしき小さい扉の前まで進み、ドアを開けるとトイレだったのでそのまま便器に顔を被せ、こみ上げてくるものを吐き出す。思っていたより嘔吐物は少なかったけれど、胃の中の黄色い液体を吐いてしまう。

「ごめん。僕が先に見つけたのに。君に見せるべきじゃなかった」

彼は私の背中をさすってくれる。

「水、持ってこようか?」

私がうなずくと、彼は台所の方へ行く。

私は便器に寄りかかっているのもしんどくなってきて、下半身は廊下に投げ出したまま床にごろんと転がる。

彼がコップに水を入れて持ってきてくれて、少し口をつけたまま床に寝転がる。少し動悸が収まってくる。


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