内政干渉
「あっぱれな愛国者様やな。ヒーロー気取りちゃうか。でもまずいで。むっちゃまずい。暴対法が改正されへんければ、ホワイトストーンの南青山再開発PJはつぶれて、何千億単位の損害が出るのはもちろんやけど、それ以上に今の日本では外国に対するアレルギーがかつて無いほど高まっとるんや。そんな時に外資であるホワイトストーンが日本の政策決定に圧力をかけてたと表ざたになれば、ホワイトストーンの今後の日本での活動にも悪影響が出る。でもその新聞記者、ホワイトストーン関係の取材を止めろという、前回のこっちの警告が伝わらなかったんか?」
「その記者は朝比奈夕子と言い、当時は毎朝新聞の記者で、もともとはホワイトストーンによる南青山のUR跡地再開発による雇用創出の地元の歓迎の声を好意的に取材していた。しかし取材の過程で地元のヤクザが短貸、短期貸借権を大量に設定しているということに気が付いたらしい。短貸はいわゆる不動産開発妨害で、ホワイトストーンが日本の慣習に不慣れなのに付け込んで立退料目当てで設定したんだが、あまりにも大量で採算が取れないレベルになり、本国アメリカ政府の政権中枢に泣きつき、日本側に暴力団の取り締まり強化を依頼したという流れだ。それを朝比奈記者が嗅ぎ付けた。暴力団取り締まり強化の可否は置いておいて、それがアメリカから日本への指令という形が気に入らないという訳だ。彼女は毎朝新聞でこのことを記事にしてスッパ抜き、アメリカの内政干渉、日本の弱腰を非難した」
「しかしそれはわいらにとってまずいんや。なぜなら実はそのホワイトストーンがわいら日本文化継承財団のアメリカにおける別動隊やからや。毎朝新聞の業績は悪く、石下神社や日本文化継承財団の機関誌の印刷を請け負ってる事業でかろうじて経営を続けていられる状態やろ。わいらは朝比奈記者の取材を止めさせるように新聞社経営陣に依頼して、東北地方に左遷させたんやが、彼女はそこから自費で都内まで来て取材を続けおった。だから、わいは彼女を解雇させろとお前に言ったはずや」
「私は新聞社に圧力をかけて解雇させた。しかし、その後彼女はYouTuberとして個人で取材を続けている。こうなってはもうどうしようもできない」
2人はしばらく黙り込む。厚東が口を開く。
「うちらは何としてでも財団を守らなあかへん。それが2000年来の物部家の使命やからや」
彼は続ける。




