下準備
――石下神社って、どんな所なんだろう?――
会うからには下準備をしておいた方が良いかもしれない。というのも私が石下神社のことを何も知らなくて全く会話にならなかったら、せっかく私に興味を持ってくれた人を失望させてしまうかもしれないから。
私はスマホで検索する。あまり多くヒットしない。でも一番上に石下神社自身が掲載している紹介ホームページがヒットする。
つらつらつらと眺めてみる。かなり古く、紀元前600年ごろの創立と書いてある。
――キリストが生まれるより前?本当かしら?――
伝説と事実を混ぜて書いているのかもしれない。年間行事や境内の図がある。かなり広い。周囲は森におおわれていて、それらの森も境内に含まれているみたい。
慈善事業という欄をクリックすると、別のページに飛ぶ。
“私たちは日本文化継承財団を通して、日本の文化向上と社会福祉に貢献します”という案内とともに、取り組んでいる慈善事業の一覧が出てきた。古い文化財の保護や環境保護、恵まれない子供たちへの支援などが書いてある。ざっと斜め読みして、いろいろ情報がありすぎて特徴とかは分からなかったけれど、ごくまじめな由緒ある神社だということは分かる。
石下神社のホームページから離れ他のサイトを探すが、ほとんどが旅行サイトで観光名所としての紹介のみである。
「あまりサイトは無かったけど、まあ普通の神社みたいね。結構古いみたい」
「そう?僕の方でも探してみるね」
涼くんはそう言うと座ったまま瞑想するみたいにじっとする。ネットに接続している時の格好だ。
しばらくすると彼は動き出す。
「本当だね、あまりサイト無いね。でもひとつ気になるのがあったよ」
彼は私のスマホに指先を触れ、そのアドレスを転送してくれる。彼は頭の中の情報をそうやって私のスマホに転送出来る。クリックしてみてみると、YouTubeのチャンネルだ。
“愛国紀行チャンネル”
という旅紀行をテーマにしたもので、主に日本神話の舞台をめぐり、この神話のこの場面で出てきた岩や海岸がどれかなどを解説、考察し、またその名残の神社の紹介をしている。
その中で石下神社も出てくる。日本古来の神社で、三重の伊勢神宮に並ぶものであると紹介されている。実際に石下神社へ行き、参道の様子、境内の建物や公開されている御神体などの紹介もある。
涼くんも横から私のスマホを覗き込む。
「なかなか荘厳な雰囲気の神社だね」
「本当。すっごく空気が澄んでいるみたい。行ってみたくなっちゃった」
「誘われているんだから、もうすぐ行けるよ」
「うん」
でも私がそのチャンネルに見入ってしまったのは、神話でも旅行先でも無く、案内人として登場するそれら動画の作成者であるYouTuberの女性に魅入られたから。話し方や歩き方、そこからにじみ出る雰囲気に魅了を感じた。
動画を見る限りでは、カメラの視点などから彼女は一人で日本中あちこちを旅しているよう。そして訪れる場所はほとんどが風光明媚なところで、その土地の伝説などを調べて解説する。その合間に彼女の感想を挟むのだけれど、その視点がとても優しくて見ていて癒される気がする。私もYouTuberの端くれなので、同じYouTuberの先輩として参考にしたい。




