光と影と天使の歩み NL
【再会】
久しぶりに会った彼女は、薄暗い部屋の中で黙々と石を磨いていた。
「久しぶり」
彼女は少し驚いているみたいだった。
「本当にあなたなの?」
「僕だよ」
彼女は俯いて、外に出てこようとはしない。
ただ、部屋の中で僕をじっと見つめていた。
「出ておいでよ」
「……無理よ」
彼女は首を横に振った。
◇
「久しぶり」
そう言葉を交わして、お互いの顔を確かめ合った。
本当に、本当に久しぶりで、運命とは本当にあるのだと。
逆光で少し見えにくかったけれど、とても、とても嬉しかった。
だけど、わたしとあなたで随分と違うのね。離れていた間に変わってしまったわ。
あなたは天使のよう。わたしは陰に入ってしまって、あなたを見つめることくらいしかできない。
「出ておいでよ」
そうできたらいい。でもね、色々知ってしまったの。
あなたもそうでしょう? あなたも知った筈。それなのに、どうしてそう輝いていられるの?
◇
鳥籠から出ておいでよ
もうそんなに自分を罰する必要はないんだ
怖いかい?
僕が隣にいるさ
手を繋いでてあげる
きっと素敵な世界が待ってる
一歩踏み出してみて
準備ができたら教えて
それまで待ってる
◆
【歩み】
「君も綺麗だよ」
嘘ではない、それは分かったの。
でも、何故か寂しかった。心が辛かった。
ええそう、もう何年もそんな状態だったわ。黒に染まり切ってしまったのかと、何度もそう思った。けれど、必死に抵抗していたんだ。
わたしはまだ持っていたのね。
そうよ、そうでなければ、この石たちが磨かれることはなかった。
人に言われて気づくことって、あるものね。
ああ、そのために今、あなたが送られてきたのかしら。
遠い昔、あなたは言ったよね。「また会おう」って。
わたし、その言葉が嬉しかった。
◇
「辛かったの」
ずっと待っていたら、彼女はぽつりと呟いた。
「見たくもないものを沢山見たわ。本当に辛くて、胸が張り裂けてしまいそうだった。でもどうしたらいいかも分からなくて、わたしは……閉じこもってしまったの」
◇
何もかもが分からなかった
無意味で無力で、仕方ないとさえ思えなかった
それでもわたし、今知った
わたしの軌跡のその全て
それはとても大切だったと
捨てたかったもの、纏わりついていたもの
全部
ある時にはわたしに必要なものだった
それがあったから今のわたしが創られた
ようやくここから始まる気がする
「ありがとう」
そう言ってお別れをするわ
そして
「おまたせ」
そう言ってまた、あなたと人生を歩んでいく
◆
【光の下で】
ここまで来るのに随分時間がかかったかもしれない。
果てしない旅をした。そしてまた君を見つけて、二人で話をして。
たくさん話をして、あなたを見つめた。わたしを見つめた。
それは新たな幕開けで。
「しっかり手は握った? 行くよ。第一歩だ!」
「きゃっ、あははっ」
妖精みたいにはしゃいで、目が合った彼女が僕に微笑む。
飛び出した世界は、僕が一人で旅してきた世界より何倍も明るく見えた。
きっとこれは、僕にとっても新たな一歩だ。
世界がこんなに綺麗だなんて、思ってもみなかった。
多分それは横に彼がいるからで、繋いだ手がわたしに「大丈夫」だと伝えてくれる。
「綺麗ね」
「……! うん」
◇
手の紐を千切った
君はもう自由だ
祝福のファンファーレを贈るよ
とびきりの場所へ案内するね
僕の愛するこの世界を
君にも見てほしいんだ
星空、夕日、海が見えて……
ああ、言わなくても
その瞳に光を宿したのなら
君はもう大丈夫
◇
風圧に飛ばされそうな水色の空から
あなたと手を繋いで薄桃の海へ
髪が乱れても楽しくて
ラベンダーの香りに包まれ
日差しが眩しく
わたし達まるで祝福を受けてる
「あなたのおかげ」
そう言うと
「君のおかげ」
と返ってくるので
繋いだ手を一層強く結んだわたしは
頬を擦り寄せキスをした
◇
この美しい夕焼けに照らされる君を、この美しい朝日に歌う君を、僕はずっと見たかった。
砂浜に降り立ち、茜の陰の彼女が優しく手を差し伸べる。
「踊りましょう」
「もちろん」
あぁ、この場所で、世界で、あなたとまた舞えるのが嬉しい。
どんなに望んだか。あなたを忘れたくても出来なかった。
黄金に煌めく、君のすべてが愛おしい。
君のことを想うだけの日々も、この瞬間を迎えるためにあったんだと、今ここに辿り着くために全ては回っていたんだと、そう思う。
「愛してる」
重なる言葉が風の旋律に乗り踊る。
手を繋ぎ、揺れる水面が時々跳ねて、わたし達を反射する。
風に舞う花びら、優しい香り、美しい空。全てが僕達二人のため用意されたように感じる。
きっと、回ってきたんだ。いつか誰かに届けた祝福が。
僕達の再会は、運命だった。
全てが回っていた。けれど、あなたに会えたことは奇跡なの。
ずっと、ずっと全部が奇跡なの。
だから、言いたいことがある――
だから、言いたいことがある――
「ありがとう。本当に、本当にありがとう」
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