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短いお話たち  作者: いとい・ひだまり


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7/7

光と影と天使の歩み NL

【再会】


 久しぶりに会った彼女は、薄暗い部屋の中で黙々と石を磨いていた。


「久しぶり」


 彼女は少し驚いているみたいだった。


「本当にあなたなの?」

「僕だよ」


 彼女は俯いて、外に出てこようとはしない。

 ただ、部屋の中で僕をじっと見つめていた。


「出ておいでよ」

「……無理よ」


 彼女は首を横に振った。



      ◇



「久しぶり」


 そう言葉を交わして、お互いの顔を確かめ合った。

 本当に、本当に久しぶりで、運命とは本当にあるのだと。


 逆光で少し見えにくかったけれど、とても、とても嬉しかった。


 だけど、わたしとあなたで随分と違うのね。離れていた間に変わってしまったわ。

 あなたは天使のよう。わたしは陰に入ってしまって、あなたを見つめることくらいしかできない。


「出ておいでよ」


 そうできたらいい。でもね、色々知ってしまったの。

 あなたもそうでしょう? あなたも知った筈。それなのに、どうしてそう輝いていられるの?



      ◇



鳥籠から出ておいでよ

もうそんなに自分を罰する必要はないんだ


怖いかい?

僕が隣にいるさ

手を繋いでてあげる


きっと素敵な世界が待ってる

一歩踏み出してみて


準備ができたら教えて

それまで待ってる




      ◆




【歩み】


「君も綺麗だよ」


 嘘ではない、それは分かったの。

 でも、何故か寂しかった。心が辛かった。


 ええそう、もう何年もそんな状態だったわ。黒に染まり切ってしまったのかと、何度もそう思った。けれど、必死に抵抗していたんだ。

 わたしはまだ持っていたのね。

 そうよ、そうでなければ、この石たちが磨かれることはなかった。


 人に言われて気づくことって、あるものね。

 ああ、そのために今、あなたが送られてきたのかしら。


 遠い昔、あなたは言ったよね。「また会おう」って。

 わたし、その言葉が嬉しかった。



      ◇



「辛かったの」


 ずっと待っていたら、彼女はぽつりと呟いた。


「見たくもないものを沢山見たわ。本当に辛くて、胸が張り裂けてしまいそうだった。でもどうしたらいいかも分からなくて、わたしは……閉じこもってしまったの」



      ◇



何もかもが分からなかった

無意味で無力で、仕方ないとさえ思えなかった


それでもわたし、今知った


わたしの軌跡のその全て

それはとても大切だったと


捨てたかったもの、纏わりついていたもの

全部

ある時にはわたしに必要なものだった

それがあったから今のわたしが創られた


ようやくここから始まる気がする


「ありがとう」

そう言ってお別れをするわ

そして

「おまたせ」

そう言ってまた、あなたと人生を歩んでいく




      ◆




【光の下で】


 ここまで来るのに随分時間がかかったかもしれない。

 果てしない旅をした。そしてまた君を見つけて、二人で話をして。


 たくさん話をして、あなたを見つめた。わたしを見つめた。

 それは新たな幕開けで。


「しっかり手は握った? 行くよ。第一歩だ!」

「きゃっ、あははっ」


 妖精みたいにはしゃいで、目が合った彼女が僕に微笑む。

 飛び出した世界は、僕が一人で旅してきた世界より何倍も明るく見えた。

 きっとこれは、僕にとっても新たな一歩だ。


 世界がこんなに綺麗だなんて、思ってもみなかった。

 多分それは横に彼がいるからで、繋いだ手がわたしに「大丈夫」だと伝えてくれる。


「綺麗ね」

「……! うん」



      ◇



手の紐を千切った

君はもう自由だ

祝福のファンファーレを贈るよ


とびきりの場所へ案内するね

僕の愛するこの世界を

君にも見てほしいんだ


星空、夕日、海が見えて……

ああ、言わなくても


その()に光を宿したのなら

君はもう大丈夫



      ◇



風圧に飛ばされそうな水色の空から

あなたと手を繋いで薄桃の海へ


髪が乱れても楽しくて

ラベンダーの香りに包まれ

日差しが眩しく


わたし達まるで祝福を受けてる


「あなたのおかげ」

そう言うと

「君のおかげ」

と返ってくるので


繋いだ手を一層強く結んだわたしは

頬を擦り寄せキスをした



      ◇



 この美しい夕焼けに照らされる君を、この美しい朝日に歌う君を、僕はずっと見たかった。

 砂浜に降り立ち、茜の陰の彼女が優しく手を差し伸べる。


「踊りましょう」

「もちろん」


 あぁ、この場所で、世界で、あなたとまた舞えるのが嬉しい。

 どんなに望んだか。あなたを忘れたくても出来なかった。


 黄金に煌めく、君のすべてが愛おしい。

 君のことを想うだけの日々も、この瞬間を迎えるためにあったんだと、今ここに辿り着くために全ては回っていたんだと、そう思う。


「愛してる」


 重なる言葉が風の旋律に乗り踊る。

 手を繋ぎ、揺れる水面が時々跳ねて、わたし達を反射する。


 風に舞う花びら、優しい香り、美しい空。全てが僕達二人のため用意されたように感じる。

 きっと、回ってきたんだ。いつか誰かに届けた祝福が。

 僕達の再会は、運命だった。


 全てが回っていた。けれど、あなたに会えたことは奇跡なの。

 ずっと、ずっと全部が奇跡なの。

 だから、言いたいことがある――


 だから、言いたいことがある――


「ありがとう。本当に、本当にありがとう」







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