第一節|道の樹に住む① - 帰還
神との戦いは、時間にしてみればほんの一時間程だった。自分の生死を彷徨ったのにも関わらず、今こうやって生きているのは、この人達のお蔭だと今でも感じる。
ただ、そこから目の前の景色は想像する白冠級のものとは少し違ったみたいだ…。
「ガキが!早くお前のいるパーティ名を教えろ!尻拭いさせられました、って言って顔面の目と鼻と口が同じ位置になるまで凹ますッ…!」
ヴィットが私に詰め寄って脅しにかけている…確かに私のいるパーティ(の勇者)の尻拭いだけど、白冠級の武闘家にここまで怒られるなんて知らなかった…。
「わ、私は〔決死進軍〕の荷持ちですけど…あれは初見殺しだったんです!だからそこまで怒らないでください…。」
「アァン!?」
「どうどうヴィット。せやなぁ、試練を受けたパーティじゃないと倒せないから他パーティとも組むの難しいし、しかも完全な暗闇を使う相手やったんやろ?酷い有様やったんやろうなぁ。」
ヴィットを落ち着かせるようメイリーダが横から入って語りかける。その場にいたトデはヴィットを後ろから羽交い締めにしてるし、エンスタはヴィットに対して猛獣を落ち着かせるような対応だ。
「はい…私がどうにかして助けるように動きましたけど…大体半分くらいは…殺されたと思います。」
敵がいなくなり静寂が訪れている大空間、その周りを見てみると血飛沫だらけだ。
戦闘の後には倒れてあった死体や、飛び散った腕とかが散乱していて、見るに耐えない惨状だった。
今は死体はフォステルセが火葬しているし、その横でケテルとロワーレが黙祷している。戦う時は少しの時間だったのに、死体は山ができる程で見るのも辛かった。
私が燃えている死体を見ていたのを気にしたのか、エンスタとトデが語りかけてくる。
「それにしても、仲間を助けたというがどうやって?お前は荷持ちだろう、戦闘が出来ないなら援護くらいしか出来なかったはずだ。」
「確かに。荷持ち…ソフのみここにいるとするならば撤退戦だったと推測できる。一体どう動いた?」
神にどうやって相手していたのか聞いてきた。あの時は私が本気になって動いていたから曖昧な部分も多いけど…そんな感じで思い出しながら何があったかを話した。
まず最初に囮役になる為に暗闇の中で明かりを照らしたこと。その次に混乱している仲間の中で入口に逃そうと大声で逃してたこと。最後にパーティの称号持ちを逃す為に神の間をすり抜けていったこと。
これを段々話していくと、徐々に怪訝になっていく4人の顔が露わになってきた。
「…お前、自殺願望者か?」
「優秀だったか、蛮勇か…。何にせよ、よく生きているな…。」
いや、実際その通り…神を相手にして生きていられたのが不思議だよ…。
「酒場で喋ったら確実に嘘って言われて引かれる内容やなぁ。ま、そうなんだろうなってうち等は信じるしかあらへんけどな?」
「ただの荷持ちがこんなところで生き残っていた以上、私達が証人だろう。貴様は良くやった。」
エンスタがポンっと私の頭に手を置いて撫でてくれる。なんだか恥ずかしい…。
「チッ。しゃーねぇ、まーお前のパーティが試練を受けなければ俺達が試練を受けていただけだ。許してやるよ。」
「あ、ありがとうございます。」
よかった、許してくれた。
「〔決死進軍〕の称号持ちを一発ずつ殴るだけにしてやる。」
よくない、許してくれてなかった。
「おい、奥の扉の先の調査が終わった。」
すると、試練が書かれてあった扉からアルクと付いて行ったミロスチが帰ってきた。
「あの扉の先はまだ先への螺旋階段がある。あそこからこのダンジョンの根幹魔力も感じ取れる。ミロスチが先行して見に行ったが結構長い階段のようだ。行くならまた準備が必要になる。」
「ここ、王国の地下にあるってのにまだそんなに広い先があるの?本当厄介ね。」
同じく丁度よく火葬していた3人も戻ってきた。
「どうしますか?私達はこの試練がある階域の攻略をしていましたけど…。」
ロワーレがケテルに問いかけると、ケテルはふとした思いつきでコチラを見てきた。
「そうだね。ソフはどうするかい?」
……………。
「………………。え、わ、私ですか!?」
いきなり振られた!?
そうするとフォステルセがツッコみはじめる。
「いや何で部外者に聞くのよ。コイツはただの別パーティの荷持ちでしょ!」
それはそうだ。いきなり部外者に判断を託すのはどうにかしてると思ってしまった。
「いや、ソフの気持ちを優先したいだろうと思ってね。」
どうにかしてた…。
「な、なんで私に聞くんですか?私には戻る手段もパーティもないのに…。」
「確かに君のパーティは居ない。けれど戻れる手段はあるだろう?私達を頼ることを。」
「で、でも荷持ちの私が白冠級パーティの攻略を邪魔するわけには…。」
「それが何だというんだ。君はさっきまで満身創痍だったし、今はパーティから離れたダンジョン遭難者だ。遭難者は見つけ次第安全な場所に送らないといけないのはダンジョン攻略の冒険者の鉄則だ。だから当たり前に頼って欲しい。」
ケテルは目を見て話しかけてくる。その言葉は真面目で心意があって、とても優しい。それが何だというんだ、って部分でヴィットから「んな訳ねぇだろ」って聞こえたけど…この優しさを断る訳にもいかない。
そう感じて、少ししたら、私は
「なら…私を地上まで帰還させてください。」
そう答えて、ケテルは請け負ってくれた。
こうして、私は初めて〔決死進軍〕と同じパーティの仲間がいないまま地上へ帰還した。
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