第一節|道の樹に住む② - うちに来る?
ダンジョンからの帰還は意外と簡単だ。
ダンジョンはよく階層ごとに分けられていることが多くて、そして環境も全然違ったりする。沼地で統一されているダンジョンもあったりすれば、氷だらけの階層の次は溶岩が露出している階層があったりするダンジョンもある。そしてその階層ごとに出てくるモンスターも種類に数も違う。
そんなダンジョンは、入れば完全にランダムになる迷路になっている訳ではない。しらみ潰しに踏破すれば構造が全て把握できる。そしてそこは踏破済みとなり、それ以降下の階層からモンスターが来たりしなければ安全な階層となる(安全といっても、流石に氷点下だったり熱さで溶けるような所は難しいけど)。
そこにダンジョンの入口と、その階層地点の中継となる転送魔法陣を設置すれば前の階層に戻るだけで行き帰りも楽になる、という訳だ。
〔道の樹〕は特に少数精鋭のパーティだったこともあって、帰還は僅か1日掛からず戻ることが出来た。〔決死進軍〕だったら2日は掛かっていたなあ。
ダンジョンからギルドに帰ってきた私達の元に、ギルドの女性スタッフがやってくる。
「お帰りなさいませ、〔道の樹〕パーティ様。」
「あぁ、ありがとう。すぐ報告したいことがあるから報告用紙の用意を頼むかな。」
「分かりました、コチラにどうぞ。」
ケテルはすぐさま案内され、ギルドの奥の方に移動する。他の仲間達は待っている間に、ギルドに建てられているクエストの掲示板を見たり椅子に座り待機していたりと様々な中、白冠級パーティの帰還にザワザワと他の冒険者の声が聞こえてくる。
「見ろ、〔道の樹〕の帰還だ。」
「よく9人でダンジョンを歩けるな…。」
「あぁ…実力がありすぎる…。」
「にしてもあの子供はなんだ…?見るからに荷持ちみたいだが…。」
自分のことの話も聞こえてきて、場違いな様子に少し萎縮する。それもそうだ、このパーティに助けられたんだから…。
そうして待っていると、ギルドスタッフが私の元にやってくる。
「ダンジョン遭難者のソフさんですね。金冠級パーティ〔決死進軍〕が半壊し、撤退して取り残されたところを〔道の樹〕に保護されたと。」
「は、はい。その通りです。あの…〔決死進軍〕はどうなりましたか?帰還してますか?」
「〔決死進軍〕は既に帰還しております。半日前に転送魔法陣から撤退して来たところを他のスタッフが対応していました。」
「あぁ…よかった…。」
心の底から安堵する、自分の助けた人が生き残ったことに安心で心残りが消えていく。
「ですが……〔決死進軍〕の勇者、レグラ様からはこれ以上帰還する人はいないとして、帰還していない人は死亡扱いとして構わないとの言葉も貰っています…。死亡扱いされた人はパーティから離脱されますが、〔決死進軍〕にこのことを報告して再加入を申請しますか?」
「…いえ、しなくても大丈夫です…。」
「…分かりました。死亡扱いの報告だけは取り消しておきます。他に何かあれば仰ってください。」
「はい…。」
スタッフは話終わると、報告を纏めに戻っていった。…私は確かにパーティの勇者の口から捨てる言葉を受けた。私のいるべき場所は無くなった…。
…ここにいる用はもうないし、すぐにギルドから出よう…
「困っているみたいだね。」
とぼとぼとしながらギルドから出ようとすると、横から顔を覗いてケテルが声をかけてきた。
また私に言葉をかけてきた…そういえばお礼をしていなかったな…。
「あの、ケテルさん。ここまで助けてくれてありがとうございました。救出から安全に帰還してくれてまで何から何まで…このお礼は一緒忘れません。」
ぺこりと顔を下げる。私にしたことはこの人生において唯一なものだろう。これだけでいいんだ、私が受ける施しはもういらないはず…。
「ああ、どうもいたしまして。それはそれとして困っているけどどうしたんだい?」
「ん…?」
お礼の後にまた言葉が返ってくる。これは答えた方がいいのかな…。
「わ、私からケテルさんほどの勇者にまた迷惑をかけるのはもう…」
「なに言ってるんだい?私から話してるんだからいいんだ。ほら言って。」
…この人はこういう人なのか…そう思いながら、また口を開く。
「…私はダンジョンで死亡扱いとされていました。」
「死亡扱いか…それは大変だ。それだと…」
「はい、パーティから強制離脱することになります。パーティにいない人がそこに居ても意味がないですから…。」
「…ふむ。」
「私は他のパーティや、別の荷物運びの仕事で稼ぎます。1人だけで生きるなら大丈夫ですので。だから…。」
〔決死進軍〕より前に1人でいた時に戻っただけだ、そう思いながら言葉を返す。ケテルにこのことを伝えても意味はないけどね…。
「…だから、気にしないでください。私は1人で生きていけますから。」
今までだってそうしてきた。だからこれからもそうして生きて…
「…そうか。それなら一つオススメしたい所があるんだ。」
「え、オススメしたい所…?」
なんだろう、この流れだと荷持ちを雇えるパーティとかだろうか。白冠級の勇者が知っている所だと畏れ多いものだけど…
「君、私の〔道の樹〕に来ないかい?」
「……………へ?」
ちょっと、それは恐れ多いすぎる。
誤字、脱字、文の違和感等があればコメントをお願いいたします。修正します。




