第75章:協力
――「任せる」なんて言われたら、張り切るしかないでしょ?
石造りの広間に、無数の魔物たちの咆哮が響きわたる。
牙を剥いた狼型の黒獣、腐敗した体を鎧で覆った骸骨兵、魔力で形を成した浮遊した影のような存在――。
その圧倒的な数にも関わらず、ミナもセラも一歩も引かない。
むしろ――にやりと笑っていた。
「セラ、右は任せて。アタシは左から行く!」
「了解。いつも通りね、ミナ!」
二人は背中合わせに立つと同時に駆け出した。
ミナが剣を振り抜くたび、黒い狼型魔物たちが斬り裂かれ、地面へと叩き伏せられる。
そしてその隙間を抜けてくる骸骨兵には――
「――《フレイムランス》!」
セラの火槍が一直線に突き刺さり、鎧ごと爆ぜ飛ぶ。
「おりゃあああああ!!」
「そこっ、来るわよ!」
ミナが勢い余って突っ込みすぎる瞬間、セラが氷の壁を生成して衝撃を受け止める。
すぐにミナが壁を蹴って跳び上がり、頭上から斬り下ろす――。
「ナイスアシスト!」
「任せて。あなたのそういう突っ走るところ、レイにそっくりだから慣れてるもの」
「はあ!? 誰があんな無茶苦茶と――いや似てるかも!」
二人の息は完璧に合っていた。
しかし、魔物たちの猛攻は止まらない。
影のような魔力生命体が空中を漂いながら無数の魔弾を放ってくる。
「セラ! 上から来る!」
「分かってる、――《アクアシールド》!」
複数の水の盾が空中に展開され、魔弾を弾き飛ばす。
その陰に隠れながら、ミナは跳躍し――
「――《身体強化・獣王解放》!」
ミナの髪が揺らぎ、耳と尻尾が獣のそれへと変化する。
筋肉が隆起し、目が鋭く光った。
「はああああああああっっ!!!」
爪を模した魔力の刃を振り下ろすたび、魔物たちがまとめて吹き飛ぶ。
「アタシ、今日めちゃくちゃノッてるわぁぁぁ!!」
「暴れすぎないで。まだ先があるんだから!」
セラは詠唱を開始する。
「《炎》よ、《水》よ、我が手で混ざり合い、《渦》となれ――!」
ミナが目を丸くする。
「おっと、それ……やるのか!」
「ええ――《ヘルファイア・スパイラル》!!!」
床から噴き上がる二重の炎と水の渦。それは瞬時に広間全体へと拡散し、魔物たちを巻き込む。
炎は焼き尽くし、水は凍らせ、その両方が同時に襲いかかる異常な魔法。
「ギャアアアアアアア!!」
「コォオオオオオッ!!」
悲鳴とも叫びともつかない声が響き、瞬く間に広間の半数以上の魔物が沈黙した。
「はっ……さすがセラ! エルフの魔法マジえげつねー!」
「あなたの筋肉で吠えられるよりマシでしょ?」
「おいコラ喧嘩売ってんのか!」
「余裕あるならもっと倒しなさい!」
「へいへい、言われなくても!」
再び背中合わせになり、二人は息を合わせて動き出す。
ミナは突撃、セラは援護。
その連携は、レイと共に歩んできた時間の証。
レイが信頼して任せてくれた――それだけで、二人の闘志は燃え上がった。
やがて、最後の魔物が呻きながら崩れ落ちた。
ミナは息を切らしながらも、満足げに拳を突き上げる。
「よっしゃああああ!! 全滅――!!!」
セラは杖を肩に乗せながら、呆れ半分、笑み半分で応える。
「まったく……レイに褒められたら、もっと調子に乗るんでしょうね」
「当たり前でしょ! 褒めさせるためにやってんだから!」
「……はいはい。じゃあ、次はレイに褒めてもらいに行きましょうか」
「おう!」
二人は歩き出す。背後には魔物の残骸が山のように積み上がっていた。
その頃――奥の台座で扉の解析をしていたレイが、背後の惨状に気づき、ちらりと振り向く。
「おー……すげぇな。ほんとに全部片付けやがった」
ミナが親指を立てて叫ぶ。
「見た!? 見た!? 褒めていいんだよレイ!!」
レイは苦笑しつつも親指を返した。
「はいはい。よくやったな、お前ら」
セラは胸を張りながら、どこか嬉しそうに呟く。
「当然よ。――だって、レイの“仲間”なんだから」




