第220章:もう一人の自分
巨大な扉の前。
静寂。
誰も、すぐには動けなかった。
◆
そこに立っていたのは――
レイ。
間違いなく。
顔も。
声も。
雰囲気さえも。
◆
ただ一つ違うのは。
その目だった。
ひどく疲れている。
何年も戦い続けたような。
諦めと執念が混ざった目。
◆
「……誰」
ミナが低く言う。
剣を構える。
◆
“もう一人のレイ”は少し笑う。
「その反応、分かる」
「俺も最初そうだった」
◆
レイ本人は言葉を失っていた。
胸がざわつく。
頭が痛い。
でも。
目の前の存在を見た瞬間。
なぜか分かった。
◆
(……俺だ)
理由なんてない。
でも。
確信だけがある。
◆
「……あなた」
レイが一歩前へ出る。
「俺なの?」
◆
男は数秒黙る。
そして。
苦く笑った。
「半分正解」
◆
「俺は――」
少し空を見る。
「“失敗したお前”だ」
◆
空気が凍る。
◆
「失敗……?」
レイが眉をひそめる。
◆
未来のレイは扉にもたれる。
腹に深い傷。
右腕には、今のレイより酷い光の亀裂。
身体が崩れかけている。
◆
「この世界」
低い声。
「一回終わった」
◆
全員が止まる。
◆
「門が開いた」
「王都も」
「学院も」
「北の森も」
「全部壊れた」
◆
ミナが顔を曇らせる。
「……何言ってるの」
◆
未来のレイは静かに続ける。
「お前らも死んだ」
視線が揺れる。
「……守れなかった」
◆
レイの胸が締め付けられる。
◆
「だから俺は」
未来のレイが黒い結晶を見る。
「境界を壊して」
「時間をねじ曲げた」
◆
ユーノの顔色が変わる。
「……時間逆行?」
「そんなの理論上――」
「代償は払った」
未来のレイが苦笑する。
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身体のヒビが広がる。
パキッ。
少し崩れる。
◆
「俺はもう限界」
「だから」
今のレイを見る。
真っ直ぐ。
◆
「今度こそ失敗するな」
◆
その瞬間。
巨大な扉が脈打つ。
ドクンッ!!
◆
黒い霧。
圧倒的な気配。
空間が裂ける。
◆
アイリスの顔色が消える。
「……まずい」
「開く」
◆
未来のレイが剣を抜く。
蒼黒の刃。
だがボロボロ。
◆
「時間ねぇ」
笑う。
でも苦しそう。
「説明は戦いながらだ」
◆
レイを見る。
「お前」
少しだけ昔の自分を見るような顔。
◆
「剣、ちゃんと使えるか?」
◆
直後。
扉の向こうから――
“何か”が、こちらを見た。




