第219章:第零層への入口
ルミナス地下旧水路。
湿った空気。
暗い石造りの通路。
遠くから聞こえる、不気味な脈動音。
ドクン。
ドクン。
まるで巨大な心臓。
◆
一行は急ぎ足で進んでいた。
前衛はミナとカレン。
中央にレイ。
後方にセラ、アイリス、エリシア。
◆
「地下って毎回嫌な感じしかしない」
ミナがぼやく。
「明るく行こうよ」
「無理」
◆
だが。
今回は確かに違った。
空気そのものが重い。
侵食濃度が高い。
肌がピリつく。
◆
アイリスが静かに言う。
「……近い」
「第零層」
◆
レイの胸がざわつく。
頭の奥で。
知らない記憶が断片的に流れる。
◆
崩れる天井。
怒鳴り声。
誰かを押し返す自分。
そして――
『早く行け!!』
◆
「っ……」
レイが足を止める。
「また?」
ミナが振り返る。
◆
「……ここ」
レイが壁を見る。
「知ってる」
◆
全員が止まる。
「初めてじゃない?」
マリーナが首を傾げる。
◆
レイはゆっくり首を振る。
「いや」
「ここ、来たことある」
確信だった。
◆
その時。
ポケットの結晶が光る。
黒い文字。
◆
『右へ曲がれ』
◆
ユーノが眉をひそめる。
「また出たのか」
◆
エリシアが驚く。
「でもその先……」
「地図に道なんて――」
◆
レイは壁へ近づく。
そして。
無意識に手を置く。
◆
ピシッ。
蒼い光。
◆
ゴゴゴゴ……
壁が動いた。
隠し扉。
◆
「……は?」
ミナが固まる。
「知ってたの!?」
◆
レイ自身が一番驚いていた。
「いや、なんとなく……」
◆
その先。
真っ暗な階段。
下へ。
さらに下へ。
◆
空気が変わる。
冷たい。
重い。
嫌な感じ。
◆
アイリスが顔を曇らせる。
「……危険」
「かなり」
◆
だが。
レイの足は止まらない。
むしろ。
何かに引っ張られるようだった。
◆
数分後。
階段の先。
巨大な扉。
黒い紋様。
見ただけで頭痛がする。
◆
そして。
そこに――
一人、立っていた。
◆
黒いコート。
蒼黒の剣。
傷だらけ。
◆
ゆっくり顔を上げる。
◆
レイと。
同じ顔。
◆
ミナが息を呑む。
「……嘘」
◆
もう一人のレイが。
疲れ切った顔で笑う。
「……やっと来たか」
◆
その声。
どこか壊れている。
◆
「遅ぇよ」
小さく笑う。
「もう、限界だ」




