第218章:もう一人のレイ
ギィィィィン!!
警鐘が鳴り響く。
宿の窓の外。
街の人々が避難を始めていた。
兵士が走る。
結界装置が起動。
◆
だが。
部屋の中は静まり返っていた。
◆
『――もう一人の“レイ”がいる』
その言葉。
誰もすぐには理解できない。
◆
「……は?」
ミナが最初に口を開く。
「どういうこと」
◆
レイも混乱していた。
「いや」
「俺も知らない」
「今、頭に浮かんだだけで……」
◆
ユーノが即座に分析モードになる。
「仮説を立てる」
指を折る。
「記憶障害」
「未来視」
「境界干渉による人格分岐」
「並行存在」
「時間逆行」
「……どれも最悪」
◆
「最後怖すぎ」
マリーナが引く。
◆
エリシアが震える声で言う。
「待って」
「もし本当に……」
レイを見る。
「地下にいるのが」
少し言い淀む。
「三ヶ月前に残った“あなた”なら?」
◆
空気が凍る。
◆
レイの胸がざわつく。
理由の分からない焦り。
◆
ポケットの結晶が熱を持つ。
ドクン。
ドクン。
◆
そして。
黒い文字が変わる。
◆
『急げ』
『間に合わなくなる』
◆
アイリスが顔を上げる。
「……来る」
◆
ズンッ。
街全体が揺れた。
◆
窓の外。
地面に黒いヒビ。
空間が歪み始める。
◆
「侵食だ!」
カレンが立ち上がる。
「もう始まってる!」
◆
ガルドが拳を鳴らす。
「作戦どうする!」
◆
ユーノが即答。
「二手に分かれる!」
「市街地防衛と地下調査!」
◆
ミナが即レイを見る。
「レイは?」
◆
沈黙。
◆
レイはポケットの結晶を握る。
頭の中。
知らない記憶。
地下通路。
崩壊。
そして。
血だらけの自分。
◆
『……来るな』
『でも来い』
矛盾した感覚。
◆
レイが静かに言う。
「……地下に行く」
◆
「危険すぎる!」
セラが止める。
「まだ記憶も戻ってない!」
◆
「でも」
レイは苦笑する。
「俺が行かなきゃダメな気がする」
◆
ミナが数秒黙る。
そして。
剣を肩に担ぐ。
「なら一人では行かせない」
◆
「当然」
カレンも立つ。
「死にかけ管理係が必要でしょ」
「その呼び方ひどくない?」
◆
アイリスも前へ。
「……私も行く」
「“もう一人”が本物なら危険」
◆
エリシアが地図を開く。
「地下旧水路から、第零層へ繋がる隠し通路がある」
「ただし――」
顔が曇る。
「戻ってきた人はいない」
◆
外。
再び大きな揺れ。
ドゴォォン!!
街の東側から黒い柱が空へ伸びる。
◆
ユーノの顔が青ざめる。
「門の起動が始まってる」
「急げ!」
◆
レイは剣を握る。
記憶はない。
でも。
確信だけはある。
◆
地下に。
自分がいる。
そして。
その先に――
“真実”が待っている。




