第215章:黒い結晶
街道。
張り詰めた空気。
侵食体が次々と姿を現す。
黒い霧。
歪む空間。
◆
「来る!」
カレンが前へ出る。
赤い刃が走る。
ザンッ!!
一体を切り裂く。
◆
ミナも飛び込む。
「レイ下がって!」
「まだ本調子じゃないでしょ!」
◆
だが。
レイは自分の手を見る。
黒い結晶。
淡く脈打つ。
◆
ドクン。
頭に響くノイズ。
知らない感覚。
なのに。
どこか懐かしい。
◆
『……忘れるな』
声。
『境界を閉じる鍵は――』
ブツッ。
途切れる。
◆
「っ……!」
レイがよろける。
◆
「レイ!」
セラが支える。
「大丈夫!?」
「……なんか」
息を整える。
「少しだけ……思い出しそう」
◆
その瞬間。
侵食体が背後から迫る。
黒い槍。
一直線。
◆
「危ない!」
ミナの声。
◆
レイが反射的に手を上げる。
考える前。
身体が動いた。
◆
ピシッ。
空間が震える。
蒼い光。
◆
ギィ……
手の中に――
剣が現れる。
◆
全員が止まる。
「出した……!」
マリーナが驚く。
◆
レイ自身も目を見開く。
「……俺」
覚えてない。
でも。
身体は覚えている。
◆
侵食槍が迫る。
反射的に剣を振る。
ザンッ!!
槍が裂ける。
空間ごと断つ。
◆
沈黙。
◆
ミナが笑う。
「おかえり、その反則武器」
◆
レイが少し困った顔。
「……なんか勝手に出た」
「前もそんな感じだった」
ユーノが即答。
◆
だが。
その時。
結晶が急に強く光る。
◆
パキッ。
小さくヒビが入る。
「……え?」
◆
次の瞬間。
黒い光が広がる。
視界が塗り潰される。
◆
――知らない場所。
暗闇。
壊れた空間。
◆
そこにいた。
黒い外套の人物。
顔は見えない。
◆
そして。
その隣に――
レイ自身。
今より少し大人びた姿。
傷だらけ。
蒼黒の剣を持っている。
◆
『……間に合わなかった』
未来のようなレイが言う。
◆
黒衣の人物が低く答える。
『だからやり直した』
◆
『今度こそ』
未来のレイが苦しそうに笑う。
『俺が全部止める』
◆
ブツン。
視界が戻る。
◆
街道。
全員が心配そうに見ていた。
「レイ!?」
◆
レイの呼吸が荒い。
汗が流れる。
◆
「……今の」
小さく呟く。
「俺だった」
◆
空気が止まる。
◆
アイリスが初めて驚いた顔をする。
「……未来視?」
「いや」
レイが首を振る。
「もっと嫌な感じ」
◆
手の中の結晶を見る。
ヒビが増えている。
◆
そして。
そこに文字が浮かぶ。
黒い光。
◆
『ルミナス地下・第零層』
◆
ユーノの顔色が変わる。
「第零層……?」
「そんな場所、記録にないぞ」
◆
レイの胸がざわつく。
嫌な予感。
でも。
行かなきゃいけない。
そんな確信だけがあった。




