第213章:出発前の違和感
数日後。
王都東門。
朝。
薄く霧がかかった石畳の道に、長距離移動用の魔導馬車が停まっていた。
目的地――
東方辺境都市。
王都から数日かかる辺境都市。
最近になって異常反応が確認された場所。
◆
「よし、荷物確認!」
マリーナが元気よく声を上げる。
「食料よし!」
「治療道具よし!」
「お菓子よし!」
「最後いらなくない?」
ミナがツッコむ。
「いる!」
◆
少し離れた場所。
レイは剣を見ていた。
蒼と黒の、不思議な剣。
記憶はない。
なのに。
持つと妙に落ち着く。
◆
「まだ違和感ある?」
セラが近づいてくる。
◆
「うん」
レイは正直に答える。
「身体は動くんだけど」
「なんか……」
剣を見る。
「自分のものなのに、自分のじゃない感じ」
◆
セラが少し考える。
「無理に思い出そうとしなくていい」
「今は慣れること優先」
◆
その時。
少し離れた場所から。
「おーい!」
ガルドが大声を出す。
「出発前ミーティングだ!」
◆
全員集合。
ユーノが地図を広げる。
「今回の目的は調査」
「最優先は状況確認」
「無茶禁止」
ここで視線がレイに向く。
◆
「……俺?」
「君」
即答。
◆
ミナが笑う。
「前科ありすぎ」
「反論できないの怖い」
◆
カレンが腕を組む。
「今回、王都ほど戦力は出せない」
「だから慎重に」
「何かあれば撤退」
◆
その時。
アイリスが急に黙る。
顔色が少し変わる。
「……変」
◆
全員が見る。
「どうした?」
◆
アイリスが王都の空を見る。
少し遠く。
東の方向。
◆
「気配が増えてる」
「しかも……」
小さく眉をひそめる。
「ルミナスだけじゃない」
◆
空気が変わる。
◆
「どういう意味?」
ミナが聞く。
◆
アイリスがゆっくり言う。
「何かが」
少し迷って。
言葉を選ぶ。
「……動いてる」
◆
レイの頭がズキッと痛む。
一瞬。
知らない記憶。
黒い外套。
あの声。
『次に会う時までに――』
◆
「っ……!」
レイが頭を押さえる。
「レイ!?」
◆
一瞬で消える映像。
でも。
胸騒ぎだけが残る。
◆
ユーノが資料を閉じる。
「……急ぐぞ」
「嫌な予感しかしない」
◆
そして。
一行は王都を出発した。
東方辺境都市ルミナスへ。
◆
だが。
誰も知らない。
その頃。
ルミナスの地下深くで――
“何か”が既に目覚め始めていた。
◆
暗闇。
巨大な繭のようなもの。
その前に立つ影。
黒い外套。
◆
「……間に合うか」
低い声。
そして。
ゆっくり目を閉じる。
「レイ」
「今度こそ、お前を止める」
◆
繭の奥で。
何かが――
目を開いた。




