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ノヴァリアの魔導師〜転生したら全属性使いだった〜  作者: にゃふ
第19話:王都編

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第210章:知らない天井

雨音。


 静かな夜。


 医療室の薄暗い明かり。


 ◆


 ピク。


 もう一度。


 レイの指先が動く。


 そして――


 ゆっくり。


 瞼が開いた。


 ◆


「……っ」


 ぼやける視界。


 白い天井。


 薬品の匂い。


 知らない場所。


(……病院?)


 違和感。


 頭が重い。


 身体が妙にだるい。


 ◆


 ゆっくり上半身を起こそうとして。


「っつ……」


 腹の奥が痛む。


 思わず顔をしかめる。


(なんでこんな痛いんだ……)


 ◆


 その音で。


 近くの椅子が揺れた。


「……ん」


 ミナが顔を上げる。


 眠そうな目。


 そして――


 固まる。


 ◆


「……レイ?」


 数秒。


 沈黙。


 ◆


「え」


「え?」


 ミナが立ち上がる。


「起きた!?」


「ちょ、待っ、ほんとに!?」


 ◆


 レイは眉をひそめる。


(……誰だ?)


 獣耳。


 知らない服。


 知らない顔。


 ◆


「……あの」


 警戒気味に言う。


「誰ですか?」


 ◆


 空気が止まった。


 ◆


「……は?」


 ミナの表情が固まる。


「何言ってんの」


「いや……」


 レイは少し困った顔。


「本当に分からない」


 ◆


 ドクン。


 ミナの心臓が嫌な音を立てる。


「……冗談?」


「いや」


 本気の顔。


 ◆


「えっと……ここどこ?」


「なんで耳……?」


「コスプレ?」


 ◆


 ミナの顔色が変わる。


「……レイ?」


 少し震えた声。


「覚えてないの?」


「何を?」


 ◆


 レイは戸惑う。


 頭の中を探る。


 覚えている。


 自分の名前。


 学校。


 日常。


 事故。


 ――そして。


(……死んだ?)


 そこまではある。


 だが。


 その後が。


 全部ない。


 ◆


「……転生?」


 小さく呟く。


 目の前を見る。


 知らない世界。


 知らない人。


 ◆


「嘘だろ……」


 顔が青くなる。


 ◆


 ミナが後ずさる。


「ちょっと待って」


「待って」


 ◆


 慌てて部屋を飛び出す。


「セラ!!」


「アイリス!!」


「起きた!!」


「でもなんか変!!」


 ◆


 数分後。


 部屋に全員集合。


 セラ。


 マリーナ。


 アイリス。


 ユーノまでいる。


 ◆


 レイは完全に困惑していた。


「えっと……」


「皆さん誰ですか」


 ◆


 沈黙。


 ◆


 マリーナが半泣き。


「えぇぇぇぇ!?」


「記憶喪失!?」


 ◆


 ユーノが真顔で分析。


「違う」


「正確には――」


 レイを見る。


「転生後の記憶だけ消えてる」


 ◆


 レイが顔をしかめる。


「転生後……?」


「待って」


「本当に異世界なの?」


 ◆


 ミナが静かにベッド横へ来る。


 少し怒ったような顔。


 でも目は赤い。


「……ほんとに忘れたの?」


 ◆


 レイは困った顔で頷く。


「ごめん」


「本当に初対面にしか見えない」


 ◆


 沈黙。


 ミナが俯く。


 小さく息を吐く。


 そして。


「……そっか」


 少しだけ笑う。


 無理やり。


「なら」


 椅子を引いて座る。


「最初から教える」


 ◆


「君の名前はレイ」


「そして――」


 少し間を置く。


 小さく笑う。


「すっごい無茶するやつ」


 ◆


 レイは困惑したまま。


 でも。


 なぜか。


 この人たちを見ていると。


 胸の奥が少しだけ温かかった。


 理由は分からない。


 なのに。


 どこか――


 忘れてはいけない何かを失った気がした。

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