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ノヴァリアの魔導師〜転生したら全属性使いだった〜  作者: にゃふ
第19話:王都編

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第209章:長い眠り

地下最深部。


 “門”が開き始める。


 漏れ出す異質な気配。


 空気が重い。


 呼吸すら苦しい。


 ◆


 レイは、まだ剣を握っていた。


 だが。


 手が震える。


 視界が滲む。


 右腕の光のヒビは、肩近くまで広がっていた。


 ◆


「……レイ」


 ミナの声が近い。


 でも遠い。


 ◆


 身体が、重い。


 立っているだけで精一杯。


 なのに。


 まだ前へ出ようとしてしまう。


(止めないと)


(ここで……)


 ◆


 黒衣の人物が、初めて険しい顔をした。


「もう動くな」


 低い声。


「これ以上は本当に戻れなくなる」


 ◆


「……うるさい」


 レイは苦笑する。


 息が乱れている。


「止まれない性格なんだよ」


 ◆


 剣を、もう一度握り直す。


 蒼と黒の光が揺れる。


 でも――


 限界だった。


 ◆


 ドクン。


 身体の奥で、何かが軋む。


 世界が傾く。


 剣の光が、不安定に明滅する。


 ◆


「レイ!!」


 ミナが走る。


 ◆


 その瞬間。


 レイの膝が崩れた。


 剣が、音もなく消える。


 ◆


 前へ倒れそうになった身体を。


 ミナが受け止める。


「おい、レイ!」


 肩を揺らす。


「返事して!」


 ◆


 反応がない。


 呼吸はある。


 でも。


 深すぎる。


 眠るように。


 いや――


 意識が落ちている。


 ◆


 アイリスの顔色が変わる。


「まずい……」


「境界側へ引っ張られてる」


 ◆


 ユーノが焦った声を出す。


「今すぐ離脱!」


「門の反応も悪化してる!」


 ◆


 黒衣の人物が“門”を見る。


 小さく舌打ち。


「……仕方ない」


 手を振る。


 空間が一瞬だけ歪む。


 ◆


「今は退け」


 静かな声。


「次に会う時までに、そいつを戻しておけ」


 ◆


「待ちなさい!」


 カレンが叫ぶ。


 だが。


 黒衣の人物は霧と共に消えた。


 ◆


 残されたのは。


 不気味に脈打つ“門”。


 そして。


 意識を失ったレイ。


 ◆


 ――数時間後。


 王都中央医療区画。


 ◆


「……起きない」


 ミナが静かに言う。


 ベッドの横。


 腕を組みながら座っている。


 ◆


 セラが状態確認を終える。


「身体の傷は回復してる」


「でも意識だけ戻らない」


 ◆


 アイリスが窓の外を見る。


「深いところに沈んでる」


「たぶん、自分で戻れなくなってる」


 ◆


 時間が過ぎる。


 一日。


 三日。


 一週間。


 ◆


 王都では混乱が続いた。


 地下異変。


 新組織の再編。


 “門”封鎖作戦。


 ◆


 でも。


 レイだけは。


 眠ったまま。


 ◆


 二週間後。


 ミナは、ほぼ毎日ここにいた。


「……遅い」


 小さく呟く。


 ベッド横。


 少し不機嫌そうな顔。


 でも、どこか不安そう。


 ◆


「起きたら文句言うから」


「勝手に寝すぎ」


 ◆


 三週間後。


 王都では噂まで流れ始める。


 “干渉者は戻れない”


 “もう目覚めない”


 ◆


 だが。


 アイリスだけは言った。


「……まだ繋がってる」


「完全には消えてない」


 ◆


 四週間目の夜。


 部屋は静かだった。


 窓の外には雨。


 ミナは椅子に座ったまま、うとうとしている。


 ◆


 その時。


 ――ピク。


 レイの指先が、わずかに動いた。

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